第2話 人の子ミカ

「ジャンヌ、その方はどうしたのだ?」


開口直後に確信をつく父、それは仕方がない。夜に1人で出て行き帰ってきたと思えば1人の美少年と帰ってきたのだから。

明らかに父は動揺していたが、それ以上にジャンヌは動揺し、緊張していたのだった…



数時間前…



「ミカエル様、如何しましたか?

まさか、天へ戻られない事情でも出来てしまったのですか?」


とても心配そうにしかし、腫れ物を触るかのように話す。


「…っ、そうみたいですね。

何やら私の上司と神は何かお考えがおありのようです。暫く人間界に留まる、いや留まらなければならないみたいですね。」


天を仰ぎ無数の星々を数分前のジャンヌの様に見つめている。


「…ミカエル様、これからどうするのですか?」


「人間として暫くは身を潜めよう、幸運な事に強い聖力は無いがある程度の呪文や魔法は使える様だ。

ジャンヌ、私は人間として君を導こう。その日までしばしお別れです…」


ミカエルが後ろを振り返ろうとすると



「待ってください!私の家ではダメでしょうか、人間の話し方などは私がお教え致します。是非私の近くで私に国を救う為の力をそして知恵と勇気をお教え下さい!」


熱くまっすぐな目。14には思えないプロポーションに裏腹な度胸。そのな彼女に見つめられミカエルは答える。



「…いいでしょう、しかし私は本当に人間界の事をそこまで理解していませんよ?」


ジャンヌはすぐさま口を開く



「だから私のそばにいた方が尚更良いです、ミカエル様の真実を知りしっかりお伝えできるし危険性がありません!」



ミカエルは数秒考えると、指を鳴らし口を開いた



「分かりました、これからいつになるか分かりませんが宜しくお願いします。」


ミカエルは切り替えが早い男だった、そしてそれはどうなるか分からない不安を抱かない為の対策でもあったのだった。


「はい!ではこの後の段取りを…」


満面の笑みで応えると今後の動向を事細かく話し合った。

そして元に戻り再び父の前へ



「どうしたんだね?ジャンヌ…」


そう訪ねた時、1人の青年が澄んだ声で話し出す


「初つにお目にかかりましたジャンヌさんのお父君。私ミカと申します。

不徳の致すところで私名前しか分からず道に倒れていたところをジャンヌさんに助けていただいた次第です…」


打ち合わせ通り、内容は無理くりだがこう言われては父は受入れざるおえない性格なのをジャンヌは知っていたのだ。父は村の自警団団長をしていたが、身寄りのないものに対しては優しかったのだった。


「……君は…イングランド軍ではないのかね?また村を焼きはらおうと密偵しにきたものではないのかね?」


それは至極自然の流れで自警団団長である父は普通の対応だったと思う。

ドンレミはジャンヌが幼少期の頃、何度も襲撃に遭い焼き払われた経験があるのだった。


「お父さん!…」


ジャンヌが制止しようとすると青年は静かに悟すのだった


「わが国ではありませんが悲しみ苦しみ伝わります、あなた方受けた痛みや辛さは必ず後世に伝承し意志を受け継ぐものがいるでしょう。それまではあなた方がこの村を守りきるのです…」


そう先を言おうとするとジャンヌが急いで横に入ってきた


「っお父さん!ミカさんは記憶をなくして疲れているの!家に泊めてあげてくれないかな!?」


「…分かった、ただ…君にも暫く居るのであれば村のために働いてもらう様になるが良いかね?」


父はいろんな疑問を飲み込み、真剣に問う


「あなた方の仕来りに従いましょう。宜しくお願いします。」



青年の割に丁寧な言葉、やけに説得力のある言葉と態度を見て不思議に思ったのは言うまでもないが不思議と敵意は感じられなかったので受け入れるしかなかったのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人と翼を失った天使 山ノ下 真吾 @robinet

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ