Aの悪夢/明日の絶望

 闇の中と言われたら、うっかり信じてしまいそうなほどに暗く絶望に満ちた朝、僕は姉ちゃんを探して歩いていた。


 闇の中に人影は見当たらず、一歩進むにつれて闇は深くなっていた。


「おや、弟君にまで影響しましたか。流石は双子」


 姿は見えなかったが、その声ははっきりと僕の耳に聴こえた。


「フフフ、ここで合ったのも何かの縁だ。どうせ目が覚めたら忘れてしまうだろうが、ボクチンは優しいから一足先に見せてあげるよ。君が今から見るのは目が覚めたら見る光景さぁ!」


 声の気配が消え、闇の中から人の影が現れた。


「ね、姉ちゃ……」


 ……。


 午前4時を少し過ぎた時間。僕は心地悪く目を覚ました。目覚まし時計が鳴るまでもう一眠りしたい所だったけれど、眠れる気がしなかった僕は大きな欠伸をした。


 その時、僕は変なものを見た。


 左手の中指に闇のように深い紫色の宝石が付いた絶望きぼうがはめられていた。


 寝ぼけていたのか、再び左手の中指を見た時にはその絶望きぼうは中指にはめられていなかった。


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