カインと夏海②

 明日香の身体を借りて目的もなくフラフラと外を歩いている時にアイツは背後から忍び寄って来た。


「カ~イくん」


 この世界で俺の存在を知っているのは僅か5人。その中で俺をそう呼ぶのはただ1人。


「やっほぉ~」


「ぐぼっ!


ギャッ!


ウグゥ!


ヌワァ!」


 ゆっくりと近づいて来たアイツもとい夏海はそう叫びながらこの身体のみぞおちの辺りに両腕で抱きついて来た。いや、抱きつくというよりはタックルをして来た。


「大袈裟だな~」


「お、大袈裟なものか。今のタックルで明日香とサーヤの意識は気絶したぞ」


 タイジュのおっさんの意識は夏海の攻撃自体では気絶にまで至らなかったが、不意に女性に触られたことで気絶した。


「流石勇者さま~ 一般市民の攻撃程度では気絶しないね~」


「その一般市民の攻撃で気絶した魔王ならここに居るがな」


「流石魔王さま~ 一般市民の攻撃程度で倒せるなんてリーズナブルなHPしてる~ って、冗談。冗談だから。そんな怖い顔をしないでよ~」


 呆れていただけだが、明日香の顔でも恐れられるほど怖い顔をしていたのだろうか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る