カインと夏海①

 口の中に広がる苦み。


 こちらの世界に来て初めてコーヒーという飲み物を知り、時折飲んできたがここまで美味しいコーヒーを飲むのは初めてだ。


「ここのコーヒー美味しいでしょ~」


「悪くない」


「美味しいなら美味しいって素直に言わないと~また連れてきてあげないよ~」


 俺を喫茶店と呼ばれる店に連れ込んだ少女で、この身体の弟である内野明日夢の彼女である縫針夏海はそう言った。


「連れて来てもらわなくてもこの店の場所は覚えたからいつでも転移魔法で飛んでくることが出来る。それよりも俺と二人きりでこんな所に居るのを知ったら明日夢は怒らないか?」


「心配しなくても明日夢は怒らないよ~ 相手は女の子だし。それに自分のお姉ちゃんだから」


「見た目は女でも、今の中身は男だ!」


 まったく、何故俺は夏海と一緒にこんな所に居るのだろうか。みぞおちの辺りをさすりながら思い出してみる。



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