闘士の秘密③

「それで、わたしの所に」


「自分の個人的な事情に巻き込んですまない」


「そんなにかしこまらなくて良いよ。人格は助け合いでしょ? でも、もう少し物理的距離は縮めて欲しいかな」


 タイジュさんが女性を苦手としていることは聞いていたけれど、会話をするのに50メートル近くも離れなくてはならないのは少し面倒に感じられた。


「し、しかし」


「何を恐れているのか分からないけど、大丈夫」


 小さな子供を諭すように優しい声でわたしは言い、一歩、また一歩とタイジュさんに近づいた。


「だ、ダメだ。こっちに来てはいけない」


「どうしてですか?」


 必死にわたしを止めようとするタイジュさんにそう聞き返すとタイジュさんは顔を真っ青にして言った。


「自分はおたくを壊してしまうかもしれない」


「わたし、これでも生前は1人で戦って来たから。簡単に壊れたりしないよ」


 そう言ってわたしはタイジュさんとの距離を一気に詰めてタイジュさんの両手を優しく握った。




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