夏まつり 明日夢サイド

 放課後、僕は夏海と2人きりで夏まつりを見て回る計画を立てていた。昨晩なんか、一年近く抑えていた夏海へのときめきがクライシスして、夏海を楽しませるコースをバンバンシュミレーションしている内に朝を迎えてしまった。


 それなのに……。


「僕の計画はボロボロだ」


「まぁ、そう落ち込まないで。折角みんながウチの歓迎会を兼ねて夏まつりに来たんだからキープスマイリングで楽しもうよ~」


 夏海は本当に楽しんでいるようで、昔からずっと変わらずに頭から垂れ提げているポニーテールを左右に揺らしていた。


「姉ちゃん」


 僕は不意に姉ちゃんを呼び止めてある指示をした。


「我が半身の願いだ。……協力するよ」


 姉ちゃんは笑顔でその指示を受けてくれた。ただ、笑顔が少しぎこちない事だけが気になった。


「クックック、この屋敷から禍々しい気配がする」


 僕の指示通り大袈裟すぎるくらいにお化け屋敷の前で立ち止まった姉ちゃんに心優しいクラスメイトたちは無視をすることなく足を止めてくれた。


「お化け屋敷かぁ」


「ここのお化け屋敷ってこの辺の祭りの中でも1、2を争う怖さだって聞くぞ」


「それは楽しみだ。ボクを笑顔に出来るかな?」


「夏海よ、汝は極度の怖がりであったな? 我らの後に着いて来るが良い」


 夏海は怖がりなんかでは無いのだが、姉ちゃんは僕のしたいことを察してくれたようで誰かが一緒に行こうという前にそう言った。


「えっ、香ちゃん」


「夏海、姉ちゃんの言葉に乗ってあげて」


「じゃあ、お言葉に甘えて。後からついて行くね~」


「それでは、往こうか」


 姉ちゃんを先頭にしてクラスメイトたちはお化け屋敷の入場料300円を次々に支払って入場して行った。





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