明日は夏まつり②
「俺たち四人が二人きりで校内を見て回っている間、彼女は明日香に自分が居なかった1年間の明日夢について真剣な眼差しで聞いていた」
想像をするつもりは全く無かったけれど、夏海の真剣な眼差しはとても鮮明な映像として僕の脳内で再生された。
「夏海が今の僕を気にしているとしても、今の僕は夏海に全く興味が無いよ」
「そうか、それならどうして。
それならどうして、嬉しそうにしているの?」
カインもとい姉ちゃんにそう指摘されるまで、僕は自分の口角が上がっていることに気が付いていなかった。
「夏海ちゃんが帰って来てくれて嬉しいんでしょ? 大好きな人が近くにいてくれて嬉しいんでしょ?」
「そんな事は」
無い。そう言えばいいだけなのに最後の二文字を口に出せなかった。
「我が半身は、明日夢は夏海ちゃんがまた自分の目の前からいなくなるのが怖いんだよね? だから距離を取ってまた同じ思いをしないようにしている。でもさ、今のままだと今までの1年間よりもっとつらい日々になるよ」
「姉ちゃんはこの1年よく平気だったね」
「平気、ではなかったよ。明日夢ほどじゃないと思うけど悲しかった。でも、また会えるって信じていたから」
どうして? そう聞き返す前に姉ちゃんは魔王設定のイタイ少女ではなく僕の双子の姉として答えた。
「だって、私と夏海ちゃんは友達だから」
思い出した。幼いころの記憶だ。小さい僕と姉ちゃんそして小さい夏海がそれぞれ同じ屋根の下で遊んでいた。
姉ちゃんはずっと僕の後ろをついて来て、僕は1人で遊ぶ小さい夏海に近づいた。そして、懐かしくも聞き覚えのある言葉を言った。
『なつみちゃん、おねえちゃんのおともだちになってください。あと、ぼくとも』
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