転入生N③

 姉ちゃんだけで十分な気もするのだが、何故だか僕まで夏海もとい縫針に校内を案内しなくてはならなくなってしまった。


「悪いけど、校内は姉ちゃんたちだけで案内してあげて」


 放課後、僕は姉ちゃん(と姉ちゃんの中に別人格として存在するカインとサーヤさん)にそう言って、さっさと教室を出て行った。姉ちゃんたちに案内を一方的に押し付けた理由というのは無い。本当に無い。本当だ。


「はぁ~あ、香ちゃんは中学の時から全く変わっていないのに明日夢は身長以外も変わっちゃったな~」


「そう言う縫針は変わっていないですね。あの時から本当に。それよりも姉ちゃんが校内を案内するために教室で縫針を待っていますよ」


 意地の悪い雰囲気を出してそう言うと、縫針はニコニコと微笑みながら僕と同じように意地の悪い雰囲気で言い返してきた。


「香ちゃんは優しいからいくらでも待っていてくれるよね~。たった1年も待てなかった誰かさんとは違って」



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