サーヤの恩返し①

 ふと気が付くと、普段は僕だけしか使わないはずのキッチンからほのかに甘い香りが漂って来た。


「姉ちゃ、サーヤさん?」


「あ! 明日夢くん。折角のお休みなのに起こしちゃった?」


「もうお昼も過ぎているのに、ぐ~すか眠っているのは日曜朝のヒーローヒロインタイムを見てから二度寝をしている姉ちゃんくらいなものだよ」


「そ、そうだよねー」


 この焦り具合から察するに、サーヤさんも休日は昼過ぎまで眠っているタイプなのだろう。


「ところでこの甘い香りは?」


「わたしは明日香ちゃんと一緒になってまだ3日しか経っていないけど、2人の役に立てることくらいは出来ないといけないと思って」


「姉ちゃんが勝手に呼びだしただけだからサーヤさんは何も気にせずに過ごしてくれて構わないのに」


「それでも死んでしまったはずのわたしに新たな道を与えてくれた明日香ちゃんと明日夢くんにはお礼がしたかったから。口に合うかわからないけれど、クッキーを作ってみたから良かったら食べて欲しいな」


 甘い香りの正体はサーヤさんの作ったクッキーだったらしい。


「じゃあ、遠慮なく。この赤い色のクッキーにしようかな」


 僕は桃の形をした赤い色のクッキーを手に取ってそれを口に運んだ。



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