サーヤの恩返し②

 僕は桃の形をした赤い色のクッキーを手に取ってそれを口に運んだ。


「ガリッ」


 僕の歯が感じ取った食感はクッキーというよりも岩石に近かった。


「どうかな? モモルビーの味は」


「え、えっと」


 残念ながらあまりの硬さで僕は味まで感じ取ることは出来なかった。


「別の味も食べてみて良いかな?」


「う、うん。いいよ」


 僕は一度モモルビーと名付けられた赤い石もといクッキーをティッシュペーパーの上に置いて、食べて身体に害が無いのか分からないほど綺麗な水色をしている亀の甲羅のような形をしたクッキーを手に取った。


「ウラサファイアです。ブルーハワイ味ですよ」


「い、いただきます」


 ウラサファイアを持つ僕の右手から『色は気にするな』という幻聴が聞こえて来たので色は気にしないようにしてウラサファイアを口に運んでみたが、数十秒前に感じた食感がリピート再生された。


「もしかして、美味しくないかな?」


 顔には出さないようにしていたのだが、何かを感じ取ってそう聞いて来たサーヤさんに対して僕は下手な真実は知らない方が良いかもしれないとは思いながらも素直な感想を告げた。


「このクッキー、凄く硬いよ」


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