僕と姉ちゃんと新たな人格⑤


「まさか、勇者?」


 魔王と炎という2つのキーワードからでは答えを導き出すには無理矢理過ぎたが『魔王の炎に焼き尽くされ、塵も残らず消え死んだ』という一文で再検索をかけると同じ答えに辿り着いた。


「な、誰だ。貴様!」


「内野明日夢。その身体の持ち主の弟です。覚えておいてください」


「この身体、だと? ……なっ!?」


 この勇者だと思われる人格は感覚的に異世界へ来たことはわかっていたようだが、身体が別の人物のものになっていた事には全く気が付いていなかったようで、今の身体を見て絶句していた。


「女の魔王に殺されたことで俺は女に転生してしまったのか」


 前世で女性の魔王に殺されてしまったらしい勇者(仮)は床に両膝をついて『嘘だ、そんな事』と叫び、突然顔を上げた。


「クックック、我が魔法は成功したようだ。どうだ、勇者、忌まわしき魔王の一部として異世界でよみがえった気分は?


な、なんだ? 口が勝手に。


突然のことに戸惑いが隠せないようだな。勇者、貴様は魔王である私の手によって私の一部として蘇ったのさぁ」


「姉ちゃん、なんで同じことを2度も伝えたの?」


「なんだと!?


勇者、これからは我が一部として働いてもらうぞ。ハーッハッハッハ」


 姉ちゃんも勇者(本物らしい)も僕の声は聞こえていないようだった。

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