僕と姉ちゃんと新たな人格④

「姉ちゃん大丈夫?」


 尻餅をついてしまった僕はすぐに立ち上がり、たった一瞬で輝きが衰えた光の柱を必死に叩いて姉ちゃんに声を掛けた。


「ここは一体何処だ?」


 光の柱の内側から聞こえたその声は親の声よりも聴いている姉ちゃんの声色だったが、なぜだか別の人物のように聴こえ、僕の身体からサーッと血の気が引いていくのを感じた。


 そして、光の柱も僕の血の気と同じようにサーッと消え去った。


「あなたは……あなたは一体誰ですか?」


 聞くまでもなく目の前にいる人物は生まれた時からずっと見てきた姉ちゃんだったが、僕は体育の授業で習った柔道だか、空手だかの構えを取って姉ちゃんの姿をした姉ちゃんではない誰かに向き合った。


「俺は魔王の炎に焼き尽くされ、塵も残らず消え死んだはず」


「魔王、炎……」


 姉ちゃんの姿をした何者かは混乱しているようで僕の声が届いていないようだったが、僕は姉ちゃんの姿をした何者かが呟いた2つのキーワードを記憶という名の本棚で検索して1つの……自分でも信じ難い答えを導き出した。


「まさか、勇者?」



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