僕と姉ちゃんと新たな人格②

 姉ちゃんはマントの中から何年か前の夏休みにお小遣いを貯めて購入した丸太を業者に頼んで大量生産してもらった20センチほどの細い杖を1本取り出してイタイ言葉を言い放った。


「魔王の名のもとに命じる。地獄の業火に焼き尽くされた勇者の魂よ、数多の世界を辿り、巡り、辿り、巡り、今ここに甦れ」


「姉ちゃん、魔王が宿敵であるはずの勇者の魂を蘇らせてどうするの?」


「……。魔王である私が最強にして最悪の力で勇者を忠実なしもべにするって設定だからいいの」


「じゃあ、今日は勇者役をすればいいんだね? それと、設定って言っちゃうんだ」


 僕と姉ちゃんは同じ日に内野家に生まれた双子の姉弟で、同じものを見て、同じものを食べて育ってきたというのにどうして姉ちゃんだけ中二病なんてイタイ病気を患ってしまったのだろうか。


「そういえば、さっきからカーペットの魔法陣が光っているけどこれって仕様なの?」


「え? 知らない。分からない」


 魔法陣から放たれた姉ちゃんも仕組みを知らないその光は魔法陣の中央に立っている姉ちゃんを中心に天井へと伸びて、円柱状の光の柱となった。



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