第二十三羽 羽は覚悟し前を向く
少女は真っ直ぐに白い道を歩いてた。
どこまで続くのか分からないこの道を。
(何故、 私はここを歩いているのか )
暫く鈍っていた思考が徐々に事態を思い出させる。
(そうか、確か私はアイツに殺されて死んだんだっけ。
じゃあここは死後の世界?
それにしては随分と殺風景で綺麗な )
少女は何もない真っ白な空間をひたすら歩く。
しばらくして前から誰か来るのが分かった。
目の前の子は何者なのか
ミーシャは女の子の元へと駆け寄る。
ここは何処なんだと聞いても、
彼女は首を横に振って答えを逸らす。
残念と溜め息をつくが、そこで一つ疑問を抱いた。
何故彼女は話さないんだろうと。
例え死んだところで声は出るはず、 それは私が今こうして話していることが
事実だし先程から彼女は表情でしか会話をしてくれなかった。
そんなことを不思議に思っていたが、 不意に上を指さされたので
その先を見てしまった。
そこでミーシャの意識は途絶えてしまった。
―――――――――――――――
「ここは・・・ ゲホッゲホッ 」
「ミーシャ、 本当にミーシャなのか? 」
「カムラ・・・ 当たり前でしょ。
一体私が何に見えるとでも・・・ 痛たた 」
ミーシャは頭を押さえながら今までのことを振り返る。
何故自分は今ここにいるのか。
周りを見ると、 アリスと見慣れない女の子がいた。
「何で私。 確かフロックスに殺されて・・・ カムラこれは一体。
もしかしてその子がアリエスタ? 」
疑問を投げかけて見てもカムラとアリスは黙ったままだった。
代わりに口を開いたのは、 誰でもないメルセクルだった。
「あの天使の子はもういないよ~? あなたを助けて消えちゃった! あの光は綺麗 だったな~ 」
「へ? だって、 え? あなたがアリエスタじゃないの? 」
「私は悪魔機関メルセクル。 まぁちょーっと訳あってみんなといるんだけどね。 せっかく仲間が助かったんだから、 もう少し喜べばいいのにさー。」
それを聞いてか、 アリスはメルセクルに突っかかって行った。
それを止めようとカムラは制止するが彼女は止まらなかった。
「喜べだって? ふざけるな! アリエスタが私の唯一の家族が消えたんだぞ! それを喜べといっているのか! 」
「嫌だなぁ~。 私は仲間が復活したことに喜べばって言っているのにさ~。
そんなんじゃ死んでいったあの子も報われないんじゃないかな? 」
「ふざけるなよ・・・ 」
アリスとメルセクルが一食触発という雰囲気が周囲を包み込むが
ここで予想外のところから声がかけられた。
「ごめんなさい! 」
カムラ含める三人がミーシャの方を見ると、
アリスの方を見て土下座しながら謝っていた。
この状況に多少の戸惑いを持ったのか先程まで怒号を飛ばしていた
彼女からの殺気は少しずつ減っていくのが分かった。
「私が弱かったばかりに、あなたの家族を奪ってしまった。
殺すなら私を殺して 」
「そんなこと出来るわけないじゃない 。 お姉ちゃんが救った命を私が奪うなんて 出来るわけないじゃない・・・ 」
それは精一杯の強がりだったのか、 アリスの瞳には涙が溜まっていて
時折ポロポロと零れ落ちるのが分かった。
そんな彼女を見たからなのか、 それともアリエスタの心が受け継がれたのかは
分からないが気が付けばミーシャも静かに涙を零していた。
(そうか。 さっきの夢の女の子がアリエスタだったのか。
涙を零しながら彼女は静かにアリエスタの心を思いを胸に刻んだ )
「ねぇー。 私も用事あるんだけどさー。 聞く気無いならここからいなくなってもいいかなぁ? 」
彼女らのやり取りを見て痺れを切らしたのか、 悪魔機関の一人メルセクルは
早く終わらせてくれないかなという態度をとっていた。
その様子を見ていたカムラは彼女らの邪魔をしたくは無かったので
一人で話を聞こうと彼女に提案したのだが、
それを聞かれたのだろうか、私なら大丈夫と
アリスそして泣き止んだミーシャまでもが集まってきた。
「ふーん、 さっきよりはマシな顔になったじゃん 」
それはどうもと仏頂面でメルセクルに返答するアリス。
同じ悪魔機関のはずなのにここまで仲良くできない奴もいるんだなと
カムラは思った。
それからメルセクルは簡単に語り始めた。
自分が来た時には、騎士の人たちはほぼ全滅。
これはヴェルがやったんだろうとアリスが意見をだす。
そして彼が居なくなってから生き残った者はどうなったかというと、
もう一人の悪魔機関、 フォーラスによって皆殺し。
元々計画に乗り気では無かったが、 タイミングを見計らい
自分の思いのままに人を殺せる瞬間を待っていたとか。
全て本人の口からでた言葉だけど本当かどうか分からない
とメルセクルは言う。
何故、同じ仲間であるはずの悪魔機関を殺したのか問うと、
こう答えてきた。
「え、 だって別にアイツに興味ないし、 ウザかったから」
三人は背筋が凍り付いた。
悪魔機関の強さは各々が身をもって体験していたため
ウザかったというだけで簡単に相手を倒してしまう彼女が恐ろしかった。
もしこの先、敵になるのだというのならここで倒してしまいたいが、
今の彼らでは彼女の足元にも及ばないことくらい百も承知だった。
その意思をくみ取ったのかそうでないのか、
彼女は敵対する意思はないことを告げる。
「どうして俺らを殺さないかだって? うーん。 君たち側にいたほうが沢山強そうな魔物と殺しあえるからかな! あ、 私そろそろ行くね~。 次会う時までには、
もう少し強くなっていてね! またねー! 」
彼女は黒い翼を背中に纏い彼方へと飛んで行った。
—――――――――――――――――
三人は一度近くの民家へと入りこれからのことを話していた。
カムラは最初アリスについてどうするか考えていたが、
彼女は自分のやるべきことをするために、二人についていくことを決意する。
「そうなるとここから近い場所は 」
「ここからだと水精霊の街【ミュア】かな 」
「知っているのかアリス 」
「うん。 この街は精霊の加護によって安全が保障されているって
聞いたことがある。 精霊の使う術は強力で悪魔だろうと簡単には攻め入ることは
出来ないって。 だから私たちも興味本位で近づいたりしなかったけど 」
「そしたら次に向かう場所はミュアで決まりかな。
ミーシャはどう? ・・・ ミーシャ? 」
「え? あ、 うん。 私もそこで大丈夫だよ? 」
「大丈夫か? もしかしてまだどっか痛むとか 」
カムラとアリスの心配にミーシャは心配ないと力強く言った。
「そうか。 疲れてるところ悪いけど少し休んだら出発するか。
外の腐敗臭にいつまでも当てられたくないし 」
二人とも同意して出発の準備を進めていた。
ミーシャは静かに覚悟を決めていた。
アリエスタの命を背負って生きてくんだ。
もう二度と、 あんな悔しい思いはしたくないと—―。
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