第十一羽 抗う羽の重み

 部屋に鳴り響いた銃声は、 一人の少女によるものだった。


「ミーシャ! 大丈夫か! 」

「こっちは防御魔法展開してたし。 そっちこそ大丈夫なんでしょうね! 」

「あぁ。 なんとか。 てかいきなり何だったんだ? 」


 発泡したとされる少女は二人が傷を負ってないのを見るや直ぐ様部屋から抜け出していった。その姿を確認した後、二人は状況を整理したが思い当たる節が見つからず困惑していた。


 ――さて、どうしたものか


「カムラ! どうすんの?! 追いかけるの!? 」

「んー。 いや、 やめよう。 今下手に動くわけにはいかない。 俺等のためにもここにいれてくれたナデアのためにも 」

「じゃあどうすんのさ。 このままじゃあまたいつ現れるか分からないよ? 」

「それなら問題ない 」


 カムラはミーシャにその理由について説明した。

その数分後二人は街を散策するために外へと出るのであった。

宿屋の受付人とは目を合わさなかった。

というよりかは逸らされたのだ。


「さてと、 どこから見て回るかな 」

「カムラ。 あそこは? 」

「流石に今は城の中へは無理だと思うよ? 」

「じゃあ他にどこに行けばいいって言うのよ 」

「見て回る所は探せば出てくるさ。 例えば... あそこの情報屋。

それから飯屋に酒屋か 」


 二人は夕刻までなるべく情報をかき集めた。

ここに以前攻めてきたときの堕天使の戦力。

この国の現状及び、 城塞と呼ばれる城について。

宿へと戻り二人は今一度、 整理をした。


 1、ここに攻めてきたときの堕天使の戦力。

これについては低級堕天使がちらほらと攻めてくる程度だと聞いた。

しかし脅威という程でもなく騎士団で対処できる程度だったと聞く。


 2、この国の現状について。

これはナデアからおおよそ聞いた通りだった。

低級だろうと堕天使が来たことにより警備が厳重になっているとのことだった。

そして獣人と合間見えようものなら、すかさず騎士団が殺すということも。


 3、城について。

残念ながらこれに関してだけ言えば収穫は無かった。

余所者には教えられんと言わんばかりだった。


 ――はぁ。 出掛けた割にはあまり情報がないな。


「ここに来て思ったけど、 思ったより居心地悪いんだけど 」

「それは俺も思った。 ピリピリしてるのは分かるんだけど、

何かこう違った感じがしたような。

まぁ今日のところはここら辺でまた明日調査しよう 」


 すっかり辺りも暗くなり二人は布団の中へと入った。

午前二時。 辺りは音もなく静寂と包み込まれている。

二人が寝ているであろう布団の前に一人の人影が見え、

即座にその布団に向けて銃を発泡した。

が手応えが無かった。 同時にその少女は二人によって直ぐ様拘束された。


「やっぱりきたか 」


 カムラはそう少女に告げた。


「痛っ! 放せ! 」


 たった今発泡してきた奴を放すわけないだろうと思いつつも背後の少女に目配せをした。カムラの目配せを受け取った少女が部屋の照明をつけた。


「さてと、 話を聞こうかな。 どうしてこんなことをするのか 」

「うるさい。 お前らに話すわけないだろ 」


 見るからに顔立ちが幼い。年齢はミーシャと同じくらいだろうか、

それでも拘束の手を緩めないのは油断出来ないと判断したからだ。

そのミーシャはカムラの判断を待っているようで傍に待機している。


「おい、 黙り込んでないでさっさと解放しろ 」

「そうだな。 こっちも少女をいつまでも捕まえとく趣味は無いし。

その前に一つだけ聞かせてくれ 」

「教えないと言っているだろ 」

「教えない?? 俺は聞かせてくれと言っただけで、

教えてくれ何て一言もいってない。

一体あんたは俺らが何の情報を持っていると思ったんだ? 」

「なっ・・・はめたのか 」

「はめたつもりはない。 あんたが勝手に自爆しただけだ 」


 いつまでも進展しない俺らの会話を扉の奥で聞いていた人物が入ってきた。

それは二人も昼間確認した宿屋の店主だった。


「どうかこの娘を開放してやってくれないか」

「無理だ。 話が見えない以上危険と判断してるからな」


 亭主は暫く考えこみ二人を一度ずつ見た。

 

「・・・分かった。 すべて話そう 」

「なっ。 そんなことしたらあんたが!! 」

「これも仕方のないことなのかもしれない。 全てを話す、

その代わりにこの都市を救ってはくれないか」

「ちょっと待てって! 見ず知らずのこの二人を信じるっていうのかよ! 」

「そうじゃない。 が、 この二人を殺せなかった時点で教団は既に次の段階に入っているだろう。 それを何としても阻止しなければならない。 それに話を知った後じゃあどのみち引き返せんよ 」

「なるほど。 俺らを殺すのが目的だったが失敗したから別の作戦に

移行しようということか 」


 カムラは後ろで控えているミーシャをチラッと見た。

ミーシャと俺は同じ意見なわけね。

実際ここに来たのも助力しに来たわけだし。ここは話に乗るしかない。


「協力はする。 詳しい話を聞かせてくれ 」


 外では黒いカラスが一羽鳴いていた。

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