第九羽 されど羽は舞い踊り


 思わず固まってしまった。

リリアが穏健派だと聞かされた瞬間考えるのをやめようかと思った。


「本当に穏健派の悪魔なのか? 」

「だからそう言ってるってば。 カムラ君はまだ疑う気なのかなー? 」

「でも悪魔っていうには羽? 翼? が生えてないよね?? 」

「ミーシャちゃんだって堕天使なのに翼ないでしょ? 」

「私は半堕天なんだってば!! ・・・って私堕天のこと話したっけ?? 」

「そんなの私ら上級者悪魔ならわかるわよ。 他の国の団長、

騎士長クラスでも分かる位だし。 そうだねカムラ君も気づいてたんだよね??」


 カムラは無言で頷いた。


――確かに堕天の話は、していない。 けど何となく察しはついていた。

自分にも気づけたわけだし、 もちろんマーブルだって分かってた。

なのに、が気づいてないわけがない。

それに他の団員にもきっと・・・


「まぁそういうことだからさ。 っと話を戻そうか。 別に翼がなくとも悪魔は悪魔なんだよ。 君たちも散々見てきたと思うけど? 」

「散々って言われてもアルテークから出発したばかり・・・そっか! 」


 ミーシャが何か分かったような顔をしたのと同時にカムラにも分かった。


「そう。 攻めてきた堕天使に翼は無かったよね? 」


 そう言われて見れば無かったような気がする。

ただあの時はそれほど見てる余裕が無かった。


「まぁでもそれぞれ受け継いでるものだってもちろんある。

ミーシャちゃんの場合は獣人の特性だったりね 」

「特性? でもこの耳くらいしかないと思うけど・・・ 」

「今はその程度の認識でいいと思うよ? 」

「で? リリア。 悪魔の特性ってのは? 」

「魔法だよ。 正式名称は魔力顕現法。 これを略して魔法と呼ぶんだ。 ちなみに

天使が受け継いだのが天聖術と呼ばれるもの。 そしてそのどちらにも属さない性質のものが魔術と呼ばれる禁忌、それらの使い手の総称が堕天使と呼ばれるわけさ 」


 ――なるほど、悪魔にも天使にも翼が無いように堕天使にも羽が無かったり、

その代わりに力を受け継いだわけか。

魔術・・・ あの死体を操る技も魔術だったのか 。


「なぁリリア 」

「何? カムラ君 」

「その魔術に、 死体を操る術? もあったりするのかな 」

「死体… を操る? 」

「そう、 うちの隊長の死体を操ってる奴がいたんだ 」

「多分それは堕天使ではないよ。 もし仮に死体を操れたとするならば、

堕天使は強力な味方をつけたことになるね 」

「なんだっけ? カムラ、 確かSS級指定っていってたやつだよね? それ」

「うん。 名前はヴァッサーゴ 」

「やっぱり・・・ か。 二人ともよく聞いて。

そのヴァッサーゴは堕天使ではない 」

「何を言って。 確かに本人から直接聞いた。

それに禁忌の術を使うのが堕天使だとも」

「本人が言ったからって、 堕天使だという確証がどこにあるんだい? 」

「それは・・・ 」

「ヴァッサーゴは悪魔機関が秘密裏に造り出してた魔物まものなのさ。そもそもSSにも指定されてる奴が自分は堕天使ですなんて正体ばらさないでしょ 」

「そうだけども。 けどあいつは実体そのものが謎に包まれてるから国ですら

手を焼いてたんだ 」

「ヴァッサーゴが表で動いているということは君たちはこれから悪魔機関の魔物とも戦わなければいけないことになるね 」

「待って、 さっきから頭の中混乱してるんだけどさ結局は何が言いたいの? 」


 ミーシャの我慢が限界を越えたのか、

頭がパンクしそうな勢いだった。


「簡単に言うと君たちが戦うべき相手は主に三勢力。悪魔、 堕天使、 そして魔物 」

「魔物・・・ もしかしてそいつらにも特性ってのがあるのか? 」

「それは分からないんだ。 あれらは穏健派が全て消去デリート

したはずだったんだけど、 まさか生き残りがいるなんて 」

「でも用はぶっ潰せばいいんだよね? カムラが 」


 ――おいおいおい簡単に言ってくれるな。

まぁしかし戦う以上この先、 避けられないだろうな。


「気を付けて。 魔物と呼ばれるそれらは全て

最低でも国でいうS級以上だから 」 

「そんなやつらが数も分からずいるのか 」

「こっちでも出来る限りの手は尽くしてみるよ。 二人ともこの世界を救って 」

「なーんかいい感じにまとめられたけど、 結局呪いについては?」


 ――肝心なことを忘れるところだった。

ミーシャって記憶力良いのか??


「そうだったね。 元々呪いのことを話すつもりでいたのに話が

脱線し過ぎちゃった。けど気が変わった話すのやめるよ 」

「どうしてさー!? 」

「呪いについては、 この先の更に先の街

  【エンデルセン】って街に行った方が早いからさ」

「エンデルセン? そこに何がある? 」

「それは私の口からは言えない。 そこでメイルと呼ばれる者に会って話を

聞くといい。 私の名前を出せば大丈夫だから 」


 ――話が急過ぎて正直飲み込めてないが

まぁ元々国を渡り歩くつもりだったし

行ってみるのも問題ないか。


 そして話を切り上げるかのように

リリアは二人に話をした。


「今日は泊まって行くといいよ。 もう遅いし 」


 二人は困惑したが確かに外は既に暗く

辺りがあまり見えなかったため二人は了承してリリアの家で一泊するのであった。


――――――――――――――――――――

 

 二人が寝静まったころ少女は写真に向かって呟いていた。


「・・・妹は必ず救いだす」


 月明かりに照らされながら

彼女リリアは固く決意していた。

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