第5話 フォールダウン & リアップ
あー、、、バッシャーン!
文字にすると、それだけなんだけど、酷くね?いきなりだよ?落ちるんだよ?水だよ?
まあでも、水だったのは、酷いというか、幸いだった。あの高さから落ちて、地面だったら、終わってた。
命からがら浮かび上がって、岸に泳ぎ着いて、ゲホゲホむせて、寝そべったときに、それに気が付いた。
空にぽっかり、俺の形の穴が開いていることに。
そこから何か、きらきら光る糸見たなものがぶら下がっていることに。
それがまっすぐ俺にめがけて伸びてきていることに。
あれ、捕まったらあかん奴や。逃げなきゃ!と思う間もなく糸はクルクルと右足に巻き付くと、俺を釣り上げた。
ひー、一本釣りされてる~。
********
そして今俺は、素っ裸で正座させられ、説教されている。
「渡りをやる奴らの中でも、お前ほど常識のない奴は見たこと無い!」
「行きたい世界があるなら、行けばよかろう。底をぶち抜く必要がどこにある!」
「どこでもない空間が、お前のせいで固定されてしまったではないか!」
目の前でぷりぷり怒っているのは、スレンダーな肢体に貫頭衣をまとい、腕輪や首輪をじゃらじゃら付けた、ちょっとハッとするほど美女。でも、激おこ。
「だいたいだな、お前はそもそも・・・」
「ちょっと待ってください。私がそもそもここが何で、自分がどういう状況かもわからないのです」
美女の言葉をさえぎって、口にしてみた。
「分からない中で、良くも一番最悪なことをやってくれたものだ」
「最悪なことって何ですか?」
「可塑性の喪失だ。」
「可塑性って何ですか?」
「ええい、うっとおしい!」
げしっと頭をつかまれた。いわゆるアイアンクローってやつだ。グワット情報が流れ込んでくる。
世界を細胞とすると、ここは細胞と細胞の間みたいなところらしい。ある世界から別の世界に移動する渡りを行うにせよ、普通はここは立ち入り禁止らしいが、なぜかズレて迷い込んだらしい。
迷い込んだものがいることに気がついたのは、急激に異様に高まり続ける魔力のせいだったらしい。俺が底だと思っていたのは、次元壁という世界と世界を分け隔てる壁だったらしい。急いでやめさせようと声をかけたと同時に壁が破壊され、・・・今に至るらしい。
「えーっと、底が抜けると、不味いことになるんですか?」
「当り前じゃ阿呆。お前を回収してから急いで応急処置したものの、既に大量の魔力があちらの世界に流れ込んでおる。世界の魔力量のバランスが崩れると、その世界の中でも様々な異変が起こると同時に、お前らの言葉で言えば、細胞の癌化がおこる。すなわち別の世界を食い始めて、無尽蔵に増殖を始めるのじゃ。」
今ひとつピンとこないけど、きっと大変なことなんだろうな?
「そうするとどうなるんですか?」
「今以上に、めんどくさいことが山ほど発生するってことじゃ!お前は自分のしでかしたことを分かっておるのか?」
「すいません、あんまり分かってないです」
「こういえば分かるかの?正直最も手軽な方法は、先ほどの世界を潰してしまう事だ。何千何億という命を奪うことになるが、そうすれば連鎖的な崩壊を防げる」
「それは、ヤバイですね」
つまり、とばっちりを食う人が、たくさんいる訳だ。
「しかし、世界というものも、あるべきして存在している。たくさんあるから一つ減っても良いというものではない。何らかの波紋は広がり続ける事となり、結局それらのつじつま合わせにはかなりの手間を取られる。そこでじゃ」
ジロリ、と全身を見渡された。え、俺素っ裸なのに、そ―ゆープレイはまだ早すぎる。
「お前には、この不始末の責任を取ってもらう。先の世界に立ち戻って、割れた次元壁の欠片と、魔力を回収してきてもらおう。」
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