第4話 ホワイトアウト
ふと気が付くと、真っ白な部屋だった。
部屋、というのはおかしいかもしれない。周りを見渡しても、ぼやけて見えない白さがある空間と言えばいいのか。
床?地面?さえも乳白色で、少しふわふわした史心地だ。
暑くも寒くもない。
さっきまで身に着けていた学生服は無くなり、素っ裸の俺がいる。
「ここは・・・結局、押し返せなかったのか」
最後の瞬間、全力を使って鳥居を押し返した所までは覚えている。ただし3センチ。
後にも先にもあんなに魔力を使ったのは、小学生の時うちの境内に続く石段を全部真っ平にしたとき以来だ。
「あんときは怒られたなあ。みだりに能力を使うなとか、雨の日滑るとか。結局能力の使い過ぎでぶっ倒れたし。その後雨水が通るように全部の石段に溝を掘らされたし、ろくでもなかった。」
「しかし、暑くも寒くもないし、真っ白で誰もいないからいいけど、何にも着るものがないのはなあ。まあ、古文書にも確かにそう書いてあったけど、恥いな」
・・・・・
・・・・・
「・・・・これって、なんか、このままいたら、発狂しちゃうって感じの、なんだっけ、感覚遮断?みたいな感じじゃね?俺、大丈夫なのか?」
・・・・・
・・・・・
「やばい。ちょっと歩き回るか。独り言いってる自分もキモイけど、何の音もしないのもぞっとする。」
睦月は歩いてみたが、何一つ景色が変わらないので、歩いたのかどうかさえもハッキリしない。大声も出してみたが、響くこともない。
それでも何もしないよりマシかと、前へ?と歩き続ける。
だんだん我慢ができなくなって、早歩きから小走りに、小走りから疾走に、と変わっていった。
走ること数分でバテた。
「どれだけ走っても全く景色が変わらない。足音もしない。心臓の音だけはやけに響く。これってもう、死んでんじゃね?死んでるにせよ三途の川ぐらいあるんじゃね?そろそろお釈迦様の指とかあってもおかしくね?」
バテて大の字に寝ころびながら、ハアハア息を切らしていると、ふと、違和感に気が付いた。
「あれ?いつのまにか能力が回復している。全部出し切ったら丸一日はぶっ倒れて、1週間は回復しないのに」
不思議に思って、何の気なしに、寝たまま地面に能力を解放する。
おなじみの感覚がして、べこっと地面が手のひらの形に3センチへこむ。魔力も減ったような感じが一瞬するものの、すぐに回復する。
「この霧みたいなのって、ひょっとして魔力そのもの!?」
面白がって、背中側から制限なく能力を使う。俺という人の形にどんどんへこんでいく地面。めり込んでいく俺。減らない魔力。
最初の地面が結構上の方にぼんやり光って見える。ヤバイ、調子に乗り過ぎたか?
そんなことを思っていると、お尻にひやりと冷たい感覚があった。
「ん?底についた?てか、固いぞこれ?いや、固いっていうか、固さとか能力的に関係ないんだけど、凹まないな、これ。なんだ?」
すでに体はぴったり、金属のようなひんやりした板の上にくっついている。
「よーし、いっちょ、やったるか」
全ての力を出し切って・・・、いや、無尽蔵に供給される魔力に、どれだけでも力が収束する。俺の中にある全魔力の、数倍、・・十数倍、・・・数十倍と魔力が跳ね上がっていく。
こんな大きな力を制御したこと無いから、ちょっと戸惑う。
体感では数百倍に達したころだろうか。上の方から声がした。
「おーい、ちょっと待て、ヤメロ!」
ん?なんか非常に焦った声がするな、と思った瞬間
バキョッ!
世界の底が抜けた。
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