第2話 鉄の掟
奥座敷に並んだメンツを見て、睦月はため息をついた。
ニマニマ笑っている妹、暑さを感じさせないたたずまいの母、無表情の父、そしてニマニマ笑っている祖父。叔父の幸人さんまでいる。
「で、どうだったんだ?」
父が表情を変えることなく、尋ねてきた。
「・・・・無理だよ」
「極星大学は無理か?」
「極星どころか、五星も無理だよ!てか、なんだって旧帝国大学以外の進学は認めないんだよ!おかしいだろ!」
「それが我が家の掟だ。それに無理という事はない。現に雄一は極星に進学した」
「俺には無理だってんだよ。兄貴みたいな化け物を引き合いに出すんじゃねえよ。姉貴は違うじゃねえか!」
「月子には才能がないが、その分自由がある。お前には才能がある。それがどんなに不便なものだろうが、お前がしきたり主になることには、我が家の掟から言って、妥当なことだ」
噛んで含めるように、父は言葉を紡ぐ。
知っている。それはもう、百回ぐらい、いや千回ぐらい自分でも噛み締めている。
「じゃあ、弥生はどうなんだよ。才能もあるし、しかも俺なんかよりよっぽど有能なやつだぜ」
「睦月さん」
母の声は涼しい。
「もう、決まっていることなのよ」
「なんでだよ!」
「決まっているの」
「・・・・・」
「・・・・・」
今まで黙っていた祖父が、うむ、とうなずいて引き継いだ。
「それじゃあ、異論もないようだし、始めるとするか」
睦月は立ち上がって、いまにも走りださんばかりの勢いで、必死に訴えた。
「異論だらけだよ!今時どこの世界に子供を放逐する親がいるんだよ!しかも唯一の抜け道が日本で一番頭のいい大学に入れることとか、無理ゲーもイイとこだろ!」
「「黙って、静かに座っておけ」」
祖父のその一言だけで、全ての抵抗する気が失せた。
「(・・・ちきしょうめ)」
「幸人、頼む」
父が厳かに宣言した。
確かに、異論はなかった。俺の意見が通らないなら、もう異論はないってことだ。
「それじゃー、始めちゃおっかー」
固い雰囲気をぶち壊すように、幸人叔父さんが明るく告げた。
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