第11話 聖剣の使い『足』 02
◆
あおぞら剣術道場。
アラベスの町の隅っこにて営まれている小さな剣術道場。
しかしながらその小ささとは比例せず、名のある道場であった。
何よりの広告塔は、その道場を営む女性。
ユズリハ。
彼女の魅力あふれる美貌、加えて近所でも評判の優しい性格という器量よしとくれば、彼女目当ての男が殺到した。
だけど彼女はきちんと剣を学ぼうとする者しか道場に入れなかった。
それでも無理矢理彼女に迫った者は、彼女自身の手によって排除された。
物理的に、だ。
彼女が手に持った木刀で、幾人もの男は打ち倒された。
そのことによって改心して門下生となった者、諦めて去る者と二通りに分かれたが、いずれにしろ彼女の評判を更に上げる結果となった。
美人で巨乳で、しかも強い。
それがユズリハという人物だ。
その彼女が道場主の剣術道場には、現在門下生が二十人近く。
うち半分が――まだ子供だ。
そういう男に媚びない姿勢が世の主婦に気に入られ、自分の子供を通わせるきっかけとなっていた。
だから一部の鉄の意志を持った男性と、子供達。
それが、あおぞら剣術道場。
故に平穏無事な時間が、その道場の中では流れていた。
「本当にいい光景だねー」
そんな人々が稽古している道場の中で、無精ひげの男はのんびりとした声で少し感慨深そうな声で言う。彼は壁に寄り掛かり、素振りを元気良くしている門下生の様子をじっくりと眺めて目を細めている。
そしてその横で、
「ひっく……えっぐ……」
アカネは顔を真っ赤にして嗚咽を上げていた。
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