聖剣の使い『足』
第10話 聖剣の使い『足』 01
◆
路地裏。
治安が悪く一般人が近寄らない、町の中の暗部。
昼間なのに暗く閉ざされたその場所に、何人もの男達がいた。
その中には先にアカネと無精ひげの男にやられた人相の悪い男二人もいた。
「――で? お前達はそいつ達にやられた、と?」
一人の男が彼ら二人の話を聞いてそう言う。影で顔が見えないのでその表情は分からないが、その声はひどく不愉快だということを十二分に表現していた。
「情けないな、おい。女子供は論外だが、剣も刀も持っていない奴に何もわからない内に沈められているなんてな」
「……返す言葉もないです」
兄貴と呼ばれていた男が下唇を噛む。
「あれは……不意打ちだったから……っ。次は絶対にこんな惨めな真似は!」
「兄貴……」
「そんな言い訳は聞きたくないんだよね」
別な方向から、少し甲高い男の声。
「とりあえずけじめは見せようよ。ね?」
「けじめ、ですか――」
「――はい」
ポトリ、と。
何かが地面に落ちた音がした。
一瞬、何が起こったのか誰も気が付かなかった。
――ただ一人。
男の腕を斬り落とした、その人以外は。
「ぐああああああああああああああああああああああ!」
「兄貴!?」
弟分が涙声を上げる。
その横で「あはははは!」と笑い声を上げる者が一人。
「これでけじめにしてあげるよ。どうせ剣も刀も持たないのならば、そんな腕いらないでしょ?」
「ぐ、ううううう」
「ひどいっす! どうして兄貴がこんな目に!」
「それが裏の世界だ」
最初に不快そうな声を上げていた男が、静かにそう告げる。
「餓鬼に舐められた行為をされた。得体の知らない男にいつの間にか打ちのめされた。それに対して悔しいのは分かるし、再度挽回をしたい気持ちも分かる。だが――言い訳をするのはどういう了見だ?」
「そうそう。だから実際に女の子にやられたそっちの君じゃない方にけじめをつけてもらったんだよ」
「ひっ……」
弟分が恐怖で引き攣った。
暗闇で口元しか見えないその男。
その口元は間違いなく――満面の笑みだった。
聞いていた通りだ。
どうしてここにいるのか。
あの戦いの後に裏の世界に入ったと聞いていたが、半信半疑であった。
――しかし。
この残虐さ。
非道さ。
それらは確実に――常人を超えていた。
「これが……」
弟分は震えながら思わず言葉を零していた。
「これが……剣聖……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます