第17話 恍惚(決して甲骨ではない)

「ふふふ…やりますねトマコさん」


 ふらつきながらエリカが答える。さっきミーンダガーの柄(伸びる)で殴ったダメージが、モロ響いている。

 ち、しぶといヤツめ。実はエリカアホの子なんじゃないか?

「気を抜かないで、トマコ!確かに エリカはドジだけど、初戦を勝ってるんだよ!

ある意味ダークホースだったキールよりも深刻な相手だよ!!」

  観客席から、ノアが声援をくれる。そうだ、キールだってアホみたいに求婚してくるアホだったが、実際にアームズを使いこなし、強かった。改めて気を引き締めエリカを見直す。

「ふふふ…この鈍い痛みこそ、生きている証。

 恍惚!!

ああ、なんと素晴らしい世界でしょう!!」


 自らの痛みに愉悦し、 息を切らせてボーっと頬を染める女がそこにいる。目は血走りなんか熱っぽくこちらを見てくる。もっとこいよ、みたいな。

 なにそれ変態さんですか?


「取らせてもらうぞ、変t、エリカ!!」

ミーンダガーを向けて、俺はエリカとの距離を詰める。

「ああ!!なんと美しく輝く世界なのでしょう!!


奇目の膨女:キメラボーン!!」


 突如、虚空から泡が出現、ぶくぶくと膨れ上がりそこから獣が生まれる!それぞれは犬くらいの大きさで、多種多様な形している。こっちに向かってくる!!

「く、ミーンガード!」

 ミーンダガーを構えて防御する。いろんな攻め方をしてくる獣たちをそれぞれ受け流す。

 爪を立てる虎を、牙をむく狸を、飛び込んでくる猿を、毒を放つ蛇を…。

そして嘴を向ける鴉を。

「なかなかやるじゃない、か、エリカ!」

全ての攻撃を防がれ、獣たちはエリカの元へ戻る。

「ふふふ。あなたも、私の愛しい子らを迎えうつなんて。

ああ、アリス、ボブ、キャシー、デイビット、江の宮、痛くなかった?」

  自分の生み出した動物たちを慈しむエリカ。カラスだけ江の宮?和名?。

「動物を呼び出す、だけか?」

  にじりよって距離を詰める。犬五体と考えればそう怖いことはない。今の俺にはアームズがあるし、動物とのじゃれ合いはミーンで慣れてる。ドラゴンだけど。

「ええ、キメラボーンは、私が恍惚にボーっとする事で発動する技ですわ。効果は短期間中の生命創造」

「またかけ言葉?」

「あら、そんなお顔をなさらないで。 本番は、まだまだこれから…」

「上等! 私も今チャージされたところだ、わ!


怒竜の背止:ドラゴンシールド!」


「まあ…!」

  俺の腕に、新しい力となる盾、ミーンリフレクター(あらかじめ考えてた)が顕れる。さあ、やってやろうじゃねえか!

「ああ!!なんと尊い!

お互いの全力を出しあい、ぶつかり合い、高め合う!!


ああ!!世界は愛に満ちている!!


奇目の融乗: キメラフュージョン!!」


 さっき生み出された、猿、虎、狸、蛇が一つに合わさり、形を失う失う失う。

そして尖り、引込み、もやが形を成していく。

 猿の頭。狸の体。虎の脚。蛇の尾。

「さあ、鵺の誕生ですわ!!」


 私の目の前に、暗黒の幻獣が顕れる!

さっきとは違い、人を1人2人食べてしまいそうなくらい大きい。

正直、怖い。

だが。

「お前に鵺がいるように、俺にはミーンがいる! 絆パワー舐めんな!!」

 俺はミーンダガーで鵺に斬りかかる!

「「「「クゥアアアアアアアアアアアアア!!」」」」

 相手の獣も音を響かせて鳴き、応戦の構えを取る!

短剣と盾、牙と爪の応酬!!

 受けたエネルギー、少しずつウルクオンを削り取りながらダガーで受ける!対して相手は純正ウルクオンで形状を強固に保っている。く!減らねえ!

カン!キン!ドン!

「なかなかやりますわね、トマコさん!さすが学年女子結婚したいランキング2位、キールさんに求婚されるだけのことはありますわ!!」

「当たり前だ!俺だって取り戻したいものがあるのだから!そんなことより、アイツがそんな人気あったなんて方が驚きだわ!!」



  俺たち私たちは、アームズをぶつけながら、アホみたいな対話を続ける。

 俺の、唯一戦利ボタンが、蠢かんとするのに気づかぬまま。

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