第16話 前半(決して全般ではない)

 エリカのアームズは奇目の豊体:キメラボディ。単体ではそこまで強くないが、他のアームズと組み合わせると強くなるという。それに、前の相手からどんなアームズを勝ち取ったか明らかでない。恐ろしいアームズだ。

「さあ、準備はよろしくて、トマコさん?」

「ああ、いいわよ」

 俺は怒竜の炳頭:ドラゴンヘッドを起動させ、愛するミーンを起こす。今やおなじみ、怒竜の刃牙:ドラゴンファングを形成する。

 キールとの対戦後に鍛錬した結果、もうひとつのボタンを起動、怒竜の背止:ドラゴンシールドを作るには十分ほどかかる。 キールは紳士的だったから良かったものの、今度のエリカが速攻で決めてきたら、かなり危うい。なんとか耐えきるしかない。

「あら、嫌ですわそんな怖い顔をされて。お手柔らかに」

  構える私に対して、位を崩さないエリカ。

「ならば行かせてもらう!行くぞミーン!!」

 ” ミー!だZOY”やはり言葉が流れてくる。ZOY?

「ああ、情熱的に過ぎますわ、トマコさん。

そんな熱く滾るようなそれを、まっすぐに私にぶつけようとするなんて…」

「婉曲的に性的な表現にするんじゃねえ!!」


「ふふふ。奇目の隠身:キメラインビジブル…」


  瞬間、エリカの姿が見えなくなる!

「何!」

「ほう…」

  ヒトエ先生が感心の息を漏らす。

「この形態は奇目の豊体を、淫靡な興奮で起動した時に繰り出せる技ですわ」

 どこからか声がする。 さっきのは軽口じゃなくて技の発動条件だったのか!ええい、どこだ!まずい、エリカがどこからくるかわからない。

 とりあえずダガーを構えミーンガードの体制をとる。やってくる攻撃全般を受け止める、半自動迎撃形態だ。それにしても厄介だ、まさか起動時の精神状態で技が変化するなんて…インビジブル、恐ろしい。

 って。

「インビジブルと淫靡(インビ)をかけてるだけじゃねえか!!」

「ふふふ!ええその通り!


 奇目の豊体はそれ即ち生命そのもの、生命の三大欲求であり本質でもある生殖!

それにかこつけて技を編み出すなんて造作もございませんわ!!


ああ!世界は愛に満ちている!!


 私は女である以上生殖の業からは逃れられません!いつか殿方の命をこの身に宿し、アメーバの時代から受け継がれたバトンを明日に渡すのでしょう!


ああ!!だとしても!


 この身ひとつで生命を作り出せる喜び!それがたとえ刹那だとしても問題はございませんわ!!刹那と永遠は同じこと、消えゆく宇宙の泡沫に過ぎないのだから!


 それでいて一瞬の煌めきを放つ生命こそ尊いのですわ、あああああああああああ!!!?」


 エリカの咆哮が絶叫に変わる。俺の攻撃で。

  いやあ、あんな大きい声出されたら、見えなくても気付いちゃうよ…。

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