第14話 救済(決して休載ではない)
ある日美魔女(本人談)の策略により、ペットの命と引き換えの呪いで女の体にされ超絶進学校、学苑リュケイオンに行く羽目になった俺=私、トーマ=トマコ。 学苑を卒業しなければ呪いは解けず、卒業のためにクラスメイトと決闘を繰り広げ、第二ボタンを7つ集めた者のみが卒業できる。
そんな中私は延命措置として学生服ボタン=想像を現実にする武具となったペットのミニドラゴン、ミーンと共に求婚してくる強敵貴族クラスメイト、キールをすんでのところで倒し、からくも勝利を手にしたのだった…。
時間にして数分、感覚にして数日の思いでリュケイオンに急いで戻り、我がクラスの優等生、溢れるカリスマ、ユートを問い詰める。
コイツは、キールとの決闘、グラデュエルの前に「秘密をバラす」とかなんとか言いやがった。私(俺)が男であったことを知るのは忌々しい美魔女(本人談)と、クラスの担任ヒトエ先生だけだ。
「おい、どいういことかしら、ユート!
私の秘密を知ってるってどういうことだ?」
「ああ、試合前の秘密のことかい?なに、大したことじゃない。
君が実は魚だったってことだよ」
「えぁへは?」
魚?
あの焼いて美味しい、刺身でうまい、あのお魚?
「ど、どういうことなんかしら…?」
「ここは自主性を重んじるリュケイオンだ、自分で考えたまえ」
魚。
たくさん。
子供。
親子。
クマノミ。
!
クマノミといえば性転換する魚!
性転換!?
やはりコイツ、私(俺)の秘密を!!?
「ああ、気にしないで、トマコ。
ユートはトマコを嘘で焚きつけたはいいけど、特に理由もないから遊んでるだけ。ノア分かる。」
「ち、バレたか」
「な、なんだ〜」
心優しいクラスメイト、ノアの一言で私は安堵する。
一瞬俺が望みえぬ変態体質であるとバレたのかと…。
「だからトマコが実は男の子ってことはバレてないよ、安心して!」
「ええ、そうだな!これで枕を高く…」
高く…。
た、高く…。
た か く ー。た か く ー。
た、な、な、な
「 へぇ、これは面白いことを聞いた。嘘をついた甲斐があったよ」
「なんで知ってる!てかなんでバラしたの!?」
「あちゃー」
俺の秘密を覆っていたベールが、鋭い真実により引き裂かれ、そのあられもない姿を晒された。
***
「いやぁ、ごめんねトマコ」
「俺の、私の、秘密が…」
これはトーマとトマコの二人で言ってるんじゃないから、人称が混乱してるだけだから。
「そう落胆しなくてもいいんじゃないかな?とても面白いよ、トマコ」
「うるせー!」
ああもう最悪…。
なんで私ってこうなの?
ミーンを救いたいって願っただけで、こんなに厄災が降りかかるなんて…。
「よし、じゃあノアも言ってなかったことを言うよ。これでフェアのはず!」
「もういいよ、もうイヤよ、イヤイヤよ。
そんな、性転換する以上の秘密なんて…」
「ノアはね、人の心が読めるの」
「「!!?」」
「さっきユートが嘘ついてるっていうのもあ、トマコが実は男の子だってことも、あなたたちの思考が流れてしまったから、知っちゃったの」
え?なんだって? おいおい、ちょっと話がブッ飛びすぎじゃないか?
「なんでかは秘密、ごめんね。
でも安心して、私が今読めるのは強い思考、それこそ宇留久遠:ウルクオンが反応するくらいのものしかわからないから」
ていうか、
「そんなんグラデュエルで無敵じゃないか!」
考えたら腹立ってきた。
人の心が読める?想像力で闘うグラデュエルで、相手の手のうちがすべてわかるってことじゃないか。
知られたくない秘密をバラされた上、自分が如何に恵まれた立場なのかを平然と語る、ノアに!人の心が読める?なんだよ!
俺がこんなにも苦労しているというのに、コイツ!
俺は怒りの余りノアに迫る。
「いや、そうでもないよトマコ」
「あえ!?」
後ろから襟を引っ張られ首が閉まる私。
「強い思考が流れてくる、ということは相手の戦略だけでなく、感情も流れてくる。それこそ消極的な相手だったとしたら、消極性が伝染してこちらの戦力が削がれる」
「そんな奴は、初戦で当たるくらいだろ!それ以上の回戦まで行くと消極的な奴はいねぇわよ!」
「確かに、そうだ。でも、
心が読める
くらいで勝てるほどグラデュエルは甘くないよ。
ついでに言っておくと、僕の家系は代々裁量者なんだ。だからこのグラデュエルが如何に公平でズルしようのないものかを知っている」
「な!」
ユートまで!!
「落ち着いて聞いてくれトマコ。これは姉さんから聞いた話なんだけど、グラデュエルを勝ち進むにつれて、強い思いを持つ者ほど負けていくらしいんだ」
「なんじゃそりゃ!?そんなん無理ゲーじゃんか!
思いが強い奴が勝つのがグラデュエルじゃねえのかよ!」
言葉を振り回して問う。
「でも現に僕の姉さんは裁量者になれた。そしてこのご時世で画家になったんだ。ということは、まだ僕たちの知らない何かがグラデュエルにはあるはずなんだ。
そしてもちろん、偏屈な裁量者らしく、僕にはそれがなんなのか教えてくれなかったよ」
「マジ、かよ…」
強敵であるキールを倒し、ミーンが一歩覚醒したと思ったら、また袋小路に入ってしまった…。
3日後。グラデュエルの二回戦の相手が決まった。
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