第10話 窮困(決して求婚ではない。あってほしくない)Part2


 キールは貴族の長男として生まれ、両親の期待に尽く応える才能を持ち努力を重ねてきた。そのせいでなんというか世間ズレしてるというか、杓子定規というか、いいやつだし友達としては最高なんだけど、恋愛対象としては…って、俺本当に女っぽいこと言ってるな。

「ああトマコ、知っているかい?

ついに今日グラデュエル公式戦第一回の組み合わせが発表される。

長かった級友生活は終わりを告げ、僕らはライバルになる。

心優しい君のことだ、少し思いつめていたんじゃないかい?」

「あーうん、思いつめていたのは本当だけど、ちょっと違うかも」

この2年で俺は女っぽい喋りに抵抗がなくなった。

「では君はグラデュエルで仲間たちと死闘を繰り広げるよりもっと大きな悩みがあるというのか!?

よければ教えてくれないか。せめて力になりたい」

ん。

すんでのところで思い留まる。うっかり「男にもどるため」と話してしまいそうになったが、俺が男というのはヒトエ先生しか知らない。それに…こんな情けないこと、戻らなくてもいいかもと思い始めてるなんて、人に話せねぇ。

「ごめん、ちょっと今は言えない・・・」

「いいんだ。君がまた話したくなったら、いつでも声をかけてくれ」

 ニカっと、見ているこっちが照れるようなまぶしい笑顔を向ける。

 うう、善意が痛い。

 ピロピロピロピロピロピロピロピロ

 学生服であり、卒業要件であり、入校証であり、さらに携帯電話端末すら兼ね備えるアームズに着信が入る。

「第一回戦の相手が決まったようだ。これでもう僕たちはライバルだね」

「あ、ああ、うん」

 生返事をしながら知らせを開く。そこには・・・


「「お前/君が相手か」」


 俺 トマコVS キールの対戦が、決定した。




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