第9話 窮困(決して求婚ではない。あってほしくない)Part1


 入学して2年。俺はほどほどに強くなった。そしてあの2人はメチャクチャ強くなっていた。


「はぁー。叶わねえな…」

 俺は1人、休みの日に学苑の外の学生街で黄昏れていた。くそ女に騙されたときはいかなるものかと思ったが、案外2年も過ぎると慣れてしまった。当初女の格好するのに抵抗 があった。今はむしろ楽しんでいて、道行く若い男が振り向くのに愉悦を感じる。自分の容姿はとても男ウケするみたい。

 そして本題。今何が一番まずいかというと、このままでもいいと思う自分がいること。ミーンは口無しになったけど、命はボタンから感じる。当初は知らなかったが、卒業できず籠念生(決して留年生ではない)のまま退学時期を迎えてしまったものは、学苑の事務員として働くことができる。学苑内に入ればミーンを取り上げられずに済むし、食い扶持が確保できる。

「あー、どうしようー」

独り言が溢れる。もう疲れたな、いいんじゃないかな、とか考えてしまう。

「おや、トマコじゃないか」

  見やると、クラスメイトのキールがこっちに向かってくる。

キールは西洋出身の貴族で、「東洋に行きたい」という理由でこちらのコロニーに来たユニークな奴だ。

「どうしたんだい、トマコ。 君が悲しんでいるなんて、世界の損失だよ」

そして、どうも女としての俺を好いている、らしい。

「ああ月よ泣かないで流すのなら悲しみでなく喜びを」

らしい。

「花よ、謙虚は美徳だが、その頭を上に向けてくれないか」

らしい・・・。

「愛しい人、どうか、どうか!」

らしい。


いや、もうこれガチなやつだ。


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