第7話 始業

「ではひとりづつ自己紹介をしてもらう!みんなよろしくな!」

 目の前にはヒトエ先生。今や俺たち(私たち)は、30人ほどのクラスに別れていた。

 ああ、最悪だ・・・。

 担任 ヒトエ校長。筋骨隆々であり、人をやさしく抱きしめるようなオーラの持ち主。プラス1。

「ノアって言います。よろしくね、みんな。」

 級友 ノア。優しくて強く、幼い一人称の不思議美少女。プラス1。

「ユートと申します。皆さま、どうかお見知りおきを」

「「キャー!!」」

「「うおーッ!!」」

 級友 ユート。優等生で卒業に最も近く、実力の確かなカリスマン。

男女問わず完成を集めるその魅力。でも悪いけど個人的に絶対近づきたくない。

入学式で闖入者を平然と切り刻んだ男。マイナス100・・・。


「では早速だが実戦授業を開始する!

 諸君らはこの三年で、今時代では失われつつある『高校生』として学びつつ、

 『卒業決闘士:グラデュエイター』としてグラデュエルを行う!


 卒業式は一年に一回のみ!それまでにソウルボタンを七つ集めること!

 ソウルボタンは諸君らの第二ボタン!他のボタンはノーマルボタンだ。在学中に覚醒させればソウルボタンとして遣うことができる!

 先ほども話したが、全てのボタンを在学中に覚醒させるのはほぼ不可能!せいぜい一つくらいだ。まあ保険だな。

 グラデュエルにより級友から勝ち獲るのが王道!そして奪ったソウルボタンと共鳴すれば、それの能力を遣うこともできる!


 入学から半年は訓練期でグラデュエルはできないが、その期間に力を蓄えておかないと、すぐ退学となる。気を付けろ!!

 さしあたって必要最低限のことを一週間でできるようにする!」


「「「えー!!」」」

「えーじゃない!

 なに、ソウルボタンの起動方法を身に着けるだけだ!」

「先生、すでにできている者は・・・?」

 ユートが人の良さを感じさせる言葉で聞く。くそうイケメンめ!

「自分の技を磨くなり、人に教えるなり好きにしろ!

 ただし、現段階での決闘は禁止とする!」

 というわけで、新学期初日からいきなりの熱血指導だった。


 現状クラスでアームズを遣えるのはノアとユートの二人だけ。先生の言葉通り二人は思い思いの過ごし方をしていた。

 色んな人に教えてあげるノア。優しい。

 請われて教えるユート。やっぱり面倒見がいいのか。

 一日経つとちらほらとできるようになる人が増えてく。対して俺は・・・緊張してできないよう!!


 二、三日と経過し、クラスの半分以上ができるようになりつつ、俺はさっぱりできない。

 緊張するな、するな、と思えば思うほど力んでしまう・・・。

 だって、ミーンと会えるんだぜ?そりゃあ、立派な姿で顕現させてやんねえと。

 ああ、でもそう思えばそう思うほど、力が・・・!!!でない。

 思い悩んでいると、ヒトエ先生から話しかけられる。

「なあ、トマコ。なぜ技名が東洋漢字に西洋の読み方を当てるか知っているか?」

 ヒトエ先生が優しい笑顔でこちら近づいてくる。ああ、女だったら惚れてまうその包容力・・・! あ、今俺女だった。危ない危ない!

「さ、さあ??」

「ムチャクチャだからだ」

「!?」

「アームズクリーチャーは想像を具現化させる武具たちだ。

 今は一般的かもしれないが、千年前と比べて東洋漢字をめちゃくちゃに読んでいる。それは過去から脱し、ほんの少し先の”今”に生きるためだ。


 さあ、トーマ。お前はどんな武器が、どんな名前でどんな表記でほしい?

 どうせ最初はみんな下手だ。ムチャクチャでいい。」

 うーん・・・。

 ドラゴン。

 ミーン。

 ミーミー。

 ミーちゃん。

 肉食。

 ミート。

 切り刻む。

 刃。

 牙・・・?

「イメージしろ!武具の姿を!」

 第二ボタンから放出され、俺の右腕に光の粒子が集まる!

 もう少し、もう少しだ!

 牙。

 歯。

 口。

 顔。

 頭。

 炳頭!

 怒竜の炳頭!!

「その容に名前を付けろ!」

「怒竜の刃牙:ドラゴン・ファング!!」


俺の手に、紅い刀身のダガーが構築された!

 やった、やったぞミーン!

 俺やったよ!

 お前をやっと形にできたよ!

「うう、ひぐ」

「お前、泣く奴があるか!?」

「え、えへへ、うれしくて」

 うれし涙を流しながら、少しはにかむ。

「「うおっふ」」

 なぜかその後ろの男子からため息が漏れる。

 そしてノアやユートもこっちに視線を送る。ん?

 ”ミー。ご主人。自分の。女としてのルックス。客観視すべき。ZOY。”

 刀身から、そんな声?が聞こえた気がした。


 そんなこんなで。

 無事俺たちは全員アームズを起動できるようになった。

 

「個性ってのはある意味厄介だ。なにせ発芽するときが人それぞれ違うんだからな」

 終業。スマイルで先生が冗句:ジョークを飛ばす。うれしような、こわいような、喜びが俺の体のなかに満ちていた。

 ってあれ。

「先生、なんでおr・・・。あ、アタシの名前知っ、間違えたの?」

 こっそり聞きに行く。

「ん?ああ。

 お前、性転換者(決して生誕感謝ではない)だろ。

 入苑名簿には男と記録されていたからな」

「マジかよ!」

 俺、すでに男を捨てた奴だと思われているの・・・?

「安心しろ、人にはそれぞれ事情がある。深入りはしないさ。

 もっとも、一度男の時を見てみたいがな!」

 ムハハ!と笑う。

 

 でもなんだろう、嫌味じゃない。

 あったかい、笑い声だった。 

 ああ、この先生でよかった。今は、そう思えた。

 そう、このときの「今」は。

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