そこにいるのは…誰?

強烈な悪寒が、私を夢の中から引きずり出した。


身体は汗で冷え、息遣いも荒い。

いつもとは違う”悪夢”を見ているような、不思議な感覚。


私はベッドから体を起こし、時計を覗く。


時刻は日付をまたぎ、深夜2時を回っていた。


冷や汗が流れる。

背筋が凍るほどの不安と恐怖が、私を蝕み始める…。


「な…なにが…。」


分からない。

一体、この謎の恐怖心の正体は何なのか。


身体が怯え、ただただ私は震えていた。


ガシャアアアアン!!


何かが壊れる音が、一階から聞こえた。

ガラスのような、置物のようなものが壊れた音。


その音に驚き、心臓が飛び跳ねる。

尚も体は、何もわからない暗闇に恐怖する。


しかしその”物音”が、私にとって何かの”始まり”であるように感じて仕方がなかった。


私は恐る恐る部屋を出ると、行きたくもないリビングへと向かう。

脳は拒否しているはずなのに、体はそれを許してはくれない。


体が、本能が”行け”と叫んでいた。


階段を踏む。

一歩、一歩。

朝と同じく募る、恐怖心に耐えながら、抗いながら。

しかし感じる本能の叫びとともに、私は足を踏み出す。


リビングのドアの前は、とても大きな門のように感じられた。

ただの門ではない、まるでそれは”地獄”の入口のように、冷酷で無慈悲な門。


開けてはいけない門の前に、私は立っていた。


冷や汗は、氷のように肌に張り付いている。

目の奥が震え、視点すら定まらないほどの緊張。

手も足も、もはやまともに機能しないほどに張り詰めた空気。


私は本能のまま、動揺するまま、


”禁忌の扉”をその手で開けた。




『来ましたか…。』


そこには巫女服を着た少女が、荒れたリビングの真ん中に立っていた。


私と同じくらいの大きさで、髪の色で、


同じ声で、同じ顔。しかし眼球を赤く光らせる”何か”が。


「あ…あなたは…。」


何も飲み込めず、私はかろうじて声を出す。

喉を絞るようにして、必死に声を出す。


叔父も叔母も、血塗れになりながら動かない。


纏は部屋の隅でうずくまり、声を荒らげ泣いている。


”何か”はその全てを笑うかのように、嗤うかのように…。

ニンマリと楽しそうな笑顔を向けながら言った。


『私の名前は鬼野きの火末かまつ…。”偽りとなる”あなたを…』


彼女は尚も嗤い続ける。


私のすべてを、”否定”するかのように。


『あなたを……。”殺し”に来ました…。』

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