第3話 熾天使と熾天使

「ルシフェル様、どちらに行かれるのですか?」


そう言い放ったのは、同位階の熾天使〝アブディエル〟だった。


「私はこの世界の人間の子らに叡智と祝福を授ける為に、まず下位三隊の授業に参るつもりだ」


話をくい気味で冷静に応える。


「わざわざルシフェル様が行かれなくとも、我が神に忠実なアブディエルが神の御言葉一節一句とも間違わず、天使達に伝えてきましょう」


彼は普段は瞳を閉じ、神に最も忠実な天使とされる。閉じた瞳は相手の心理を、そして意思をも読み取ると天界では噂されていた。


「いや、私が唱え教えこの天界のあるべき姿を説う。それが私が天界で永年研究し、至った結果なのだよ。」


ルシファーは天界の空を見上げ、青く澄み切った空を力強く見つめていた。


「あなたは危険だ、あなたは理想を高くしすぎている。それでは神の域に達しようとしているようなものだ。神もあなたの動向を注視しています。もちろん私もです。

ここでの私の発言は神の意志ではありません、〝あくま〟で私アブディエル個人の意見でございます。

できるのならあなたには私と同じく神の教えをもっと多くの者に説いて…」


「アブディエル様!」


話を割って入ったのは下位三隊〝大天使〟ミカエルだった。


「人間界でまた戦争が始まりました。私はまた神様の元へ行き、守護する子らを決めて頂きたいと考えていたのですが…

現在、神様は聖戦の余波で謁見が禁止されております。

ですので神様の事を天界一、ご理解されているアブディエル様に意見を聞きたくここへ参った次第です。」


彼は武器と秤を扱う者守護者で、しばし守護聖人となって人間界へ赴くのである。


「…分かりましたミカエル、場所を移して話しましょう。

…それと、ルシフェル様?あなたにはこれからもこの天界にいて欲しい、そう思っております。

あなたが外れてしまいそうになっても私はずっと、あなたに説い続けるでしょう…

あなたの居場所はここなのです…」


そう言い残すとアブディエルはミカエルと共に去って行く。


「失礼します!」


ミカエルは一礼すると羽を広げ飛び立つ。背後にいるルシファーの圧を感じながら…




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