第4話 大天使ミカエル

「アブディエル様…」


アブディエルの半歩背後に歩き様子を伺いながらミカエルは口を開いた。

その言葉にアブディエルも足を止め、口を開く。


「ミカエル、あなたは人間界の事を気にかけなさい。あなたの守護の力で良い勝利を人間の子らに授けるのです。」


アブディエルは相変わらず瞳を閉じながら、何かを悟るように静かに歩き出す。

彼の背中の翼は6枚、そしてその翼の奥にある首筋には綺麗な金色の髪がなびいて見える。


しかし、その首筋には大量の汗が滴りアブディエルの手は強く握られたままだった。


「大丈夫でしょうかアブディエル様…」


「ミカエル…あなたは良き天使だ。神に忠誠を誓いそれ以上に人の子らの為に尽力する。…あなは必ず熾天使になりなさい、そしてこの天界を守るのです。」


「アブディエル様…私にはとても…」


「いいえ、あなたはなるのです。その為に今は人間界の聖人となり、人間界であなたの聖力(せいりき)を蓄えるのです。

きっとあなたは強く高潔な天使になるでしょう、その為に今は人間界へ多く赴きなさい。」


アブディエルはそう言うと、祈り始めた。


「天にましますわれらの父よ、

願わくは御名の尊まれんことを、

御国の来たらんことを、

御旨〔みむね〕の天に行わるる如く

地にも行われんことを。

われらの日用の糧を

今日〔こんにち〕われらに与え給え。

われらの罪を赦し給え。

われらを試みに引き給わざれ、

われらを悪より救い給え。」


「あなたの想いはいずれ果たされるでしょう。同時に厳しい道のりにもなるでしょう。しかし、その時にはたくさんの仲間が助けて下さるでしょう…

主に仕え、我が同族の皆が幸せに…

貴方は人間界へ行き、ジャンヌダルクという少女の元へ参りなさい、そして導くのです。さあ、お行きなさい人間界へ…」


そう言い残すとアブディエルは上位三隊の宮殿、〝ウィズダム宮殿〟に入っていった。


ミカエルは主に祈り、そして手には〝クラウ・ソラス〟(別名光の剣、炎の剣とも言われそれは「不敗の剣」と言われている)

と秤を持ち、地上へ降りるのだった。


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