第17話・ボロ船
持ち込まれた機材で、宇宙で集めたジャンクから外壁のシールドを取り外して、エプソの船の外装と交換していく。
「しかし凄いなコレ。昔なら博物館に高値で売り飛ばせるぞ。データバンクに正確な情報が無い。ショートジャンプ技術が常識になり始めた時代。黎明期の機体だ。どこの国で作られたのかも分からん」
「それこそ、誰かが勝手に作ったものじゃないの?」
「にしては、仕事が綺麗過ぎる。パーツがブロック式に交換できるようになってる部分もあるし……」
改造してしまうのは心苦しいぐらいの骨董品だ。腐食が激しくワープ航法やショートジャンプに耐えられないだろう装甲板。残念ながら元の装甲は剥いで、サルマのルーキーナイト号に収納しておくしか保存ができない。
「なーなー、サルマのおっちゃん」
「おっちゃんではない。年齢的に言えばおじいさんだ。で、一体何だ?」
「アタイのドールは直せないのかい? 自分で頑張ったけど、頑張ったから完動状態に遠いのが分かるんだ。それに宇宙に行くなら、こう……武器の一つも持ってた方がいいでしょ?」
「はて……まぁそっちも装甲が心もとないからな。武器ともども、宇宙に上がってからでっち上げるしかない。やれやれ、しばらく時間がかかるな」
しかし、いくら広大な宇宙でも、限定的な用途のドールに使われていた素材が見つかるだろうか? まぁジャンク屋のエプソと二人がかりなら、本体を弄ることでどうにかなるだろう。
武装は質を要求しなければいくらでも転がっている。
「じいさんのドールの武器は使えないの?」
「使えん。機密情報の塊だったため、ラウンズの機体以外が触ろうとすると自爆する。ついでに言えばお前のキゼル・ラムダだと撃てても腕が千切れる」
アンティークドールは使用している金属も異常に貴重な代物を使って作られている。これで弱かったら、当時の開発者は物理的に首を切られていたかもしれない。
そんな昔を懐かしみながら修理の日々を過ごし、とうとうアンネッタの船は完成した。お世辞にも綺麗とは言えない機体だが、これまで間借りしていたような気持ちで過ごしていたアンネッタは目を輝かせて言った。
「なんて名前にしよう?」
「じいさんのがルーキーナイト号だからベテランナイト号」
「却下だ。知り合いを思い出して、最悪の気分になる。というか、思い出して既に段々腹が立ってきた」
「ViVi」
「お前の船じゃねーよ! 本体が船のやつが他人の船に名前つけようとしている時点で、なんかおかしいけど!」
喧々諤々じみた話し合いが続いたが、とうとう面倒になってきた一行はオーナーであるアンネッタに任せた。最初からそうしていた方が良かっただろうということは考えない。
「グランパ号にするわ。この船って古くて貴重なんでしょう。全ての船のおじいさんじゃない」
「じいさんと被ってるね」
「被ってねぇ。めでたく名前の決まったグランパ号だが、武装が使い物にならん。それにアンネッタを元の組織に送るまでだから、アンネッタとエプソが乗れ」
アンネッタが帰った後は、エプソが操るというわけだ。それに対してアンネッタは複雑な表情を仲間に見せないようにしながら、うなずいた。
「ショートジャンプ含めて、船の操作は独特だ。エプソはアンネッタに動かし方を教わりつつ、不慮の事態が起こったらキゼルで出撃しろ」
「今のところ、装備とか無いんだけど」
「端材で棒と盾作っておいたから、いざとなれば盾になるぐらいで考えておけ。宇宙に上がってから、デブリ帯で銃の一つや二つは見つかる」
一行は出発の準備を始めたが、サルマはすぐにガレスを出撃可能状態にしておくことにした。ギャングもどき共が最後の動きを見せなかったのが気になるのだ。
そのすぐに明らかになる懸念はともかく、新しい仲間を連れて旅が再開された。
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