第4章 経済チートで大儲け
第1話 学校と戸籍制度とそろばん
ある時、商人子弟が俺のところに、泣きを入れてきた。
読み書きのできる人間が少ないというのだ。
元々は、学校と言うか寺子屋制度のようなものはあったのだが、それを受けられるのは元々、この国に住んでいた人間だけなのだ。
しかし、近年、他国からの流入者が増え、これらの教育では困難になったというわけだ。
当然、識字率も下がってしまう。
ここで、学校と言ってもどれだけ作ればいいかわからない。
そこで、全国一斉に国勢調査を行う事にした。
結果は、散々たるものというかとんでもない状態だった。
識字率は皇都、衛星都市、アレステア領、周辺諸侯の順に高いのだが、アレステア領と他国に近い貴族の領地では識字率が極めて低かった。
国全体では五割を割っていた。
周囲の諸国からの流入者が多いため、一部にスラム街もでき、当然、就職率は低い。
周辺諸国に近い貴族にはかなりの負担をかけているという事になる。
ただ、運の良いことに、伝染病によるパンデミックは起きていない。
アリエスたちが頑張ってくれたおかげで病院の建設が始まっていたからだ。
そこで、俺は帝国内の中心部に近い農村部にスラム街に住む者たちを移動することにした。
農地はたっぷりとあるのだが、人手不足なのだ。
まず、そこにそれ等をあてがい、戸籍を作った。
基本的には帝国内で生まれた者には戸籍があるのだがそうでないものには戸籍がなく実態がつかめていなかったのだ。
あとは、俺の教え子たちの仕事だ。と言っても今の貴族たちだが。
すでにある学校を増設したのだ。
そのあたりは、俺が援助金を出した。
問題は大人。
こちらの方もひどいのだ。これは全国的に偏っているというレベルではない。
そこで、俺は休日学校を作るように全ての貴族にお触れを出した。
休日に行う大人の学校だ。講師は週交替制で行わせた。
そしてある日・・
「陛下、これ買ってくれませんかね?」と商人子弟がやってきた。
「なんだ?」
「以前から私たちが使っていたそろばんと言うものを改良したものです」
「だからそのそろばんってなんだ?」
「簡易計算器です。陛下、ちょっと試してみませんか?」
「どういう事だ?」
「まあ、計算の競争ってとこですね」
「よかろう」
「では、陛下は暗算でお願いします。あと執事かメイドの方で何方か7桁の計算問題を作ってください」
「いや、ゲレイド、ここはお前が作れ。お前はこの中でも計算が出来る筈だ」
「了解しました」
「10個の数字をランダムに選んでください。それを私たちは足し算していきます」
「わ、わかった」とゲレイド。
「陛下、よろしいでしょうか?」
「う、うむ」
「では始めます・・・」と言ってランダムに7桁の数字を10個並べた。
先に答えを言ったのは商人子弟「45874686」です。
俺はしばらくたって、その数字にたどり着いた。
「おまえ、それで計算したのか?」
「はい」
「どうやって、計算した?」と俺は聞く。
そして、簡易的ではあるが、足し算、乗算、除算、引き算を習った。
「お前たち、時々パチパチとやっていたのはこれか?」
「はい」
「これは計算が楽だな」
「さようでございます」
「でも、何で今頃売り込みに来たのだ?」
「そろばんの改良が出来たからでございます」
「改良?」
「はい、以前、砲身を作る際、旋盤を開発しました。その応用でございます」
「そういえば、最近、木の器も旋盤で作ってるとか言ってたな?」
「はい、簡易的ではありますが、足踏みで回転を与えるものを開発し、木を回して削っております」
「そういえば食器がデコボコしていたものが奇麗な円形になったのもこのせいか?」
「はい。さらにその応用で、以前は陶器とかで使っていった玉、この部分ですね。これが木でできるようになりました。」
「木で?」
「はい、最近、固い木材が手に入る様になりそれを削ったのでございます。」
「なるほど」
「旋盤は、刃の形さえ決めておけば同じものがいくつも削れることになります。つまり、この玉の部分の大量生産に成功したのでございます」
「なるほど、陶器だと大量生産には向かないな?」
「ゲレイド、どう思う?」
「はい、とりあえず10個ほど納品していただき、財務関係で使わせてみては?」
「ふむ、そうしよう」
「価格はいかほどだ?」
「はい、大銀貨1枚です。まあ、大量生産すれば半額に落とせるとは思いますが・・」
「ではあす納品できるか?」
「はいできます」
「あとは、財務関係の連中の反応次第だな・・」
そして数日たった日・・
「陛下、財務担当のメラス侯爵が大至急お会いしたいと」
「通せ」
「どうした、メラス」
「へ、陛下。これを大至急100個注文してください」
「どういう事だ?」
「計算が早くなるばかりか、検算の時間も速くなり、仕事が思いっきりはかどります」
「うーむ・・」
「ゲレイド、メラス、これを学校で教えたらどうなると思う?」
「流通革命が起きます」とメラス。
「そんなにすごいのか?」と俺。
「凄いのなんのって・・計算がめちゃはかどり、正確さも増せばなおのことです」
「ゲレイド、卒業間近の学生って何人いる?」
「帝国全土ですと・・2000人程度でしょうか?」
「では、3000個発注してくれ」
「へ、陛下・・」
「流通革命を起こさせてやる」と黒い霧が渦巻く。
「わかりました。でも、かなりの金額です。財源はおねだりしてもよろしいでしょうか?」っとメラス。
「龍の金庫からもっていけ」と俺。
龍の金庫は俺の私財だが、流通が発達し、税金がガバガバ入ってくる。そのうちの僅かな金額を俺の収入としているのだが、使い切れないのだ。
「あと、毎年2000個発注な。学生への俺の餞別だ」
当然のことながら各地にそろばん教室が出来き、商人の副収入源になった。
そして、人口はさらに増加していった。
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