第5話 アレステア王国編入

「この王宮も久しぶりだな」



俺は千年ぶりにアレステア王国の王宮に来ている。



「陛下、一度来たことがおありで?」とゲレイド。


「まあ、前世に」と俺。


「ははは、御冗談を・・」


「まあ見て居ろって」



俺たちは、謁見室に通された。


待っていたのは、アレステア王ヨハウス。13歳で王位を継いだばかりの若者、いや子供だ。


「この度は、援軍まことに痛み入ります」とヨハウス。


「まあ、千年前の約束だからな」


「千年前?」とヨハウス


「陛下2千年前じゃ?」とゲレイド。


「それは、建前の話だろうが。でも千年前は嘘じゃないぞ。」と俺。


「「どういう事で?」」とヨハウスとゲレイド。



「うむ、ヨハウス王、この王宮には王家の正当な血を継ぐものしか開けられぬ本があったと思うが?」


「なぜそれを?」


「まあいいから、持ってきてくれ。話は其れからだ」と俺。



暫くして2冊の本が来た。結構な大きさの本ではあるが、千年も経っているのに色あせていない。つまり、本自体にツクヨミの加護がかけられているのだ。



「ヨハウス王、昔、何度か俺の城に来たことが有ったな?」と俺。


「はい、5歳くらいの頃から何度か」


「その時、俺の母にも会ってるな?」


「はい」


「その傍らにいた女性を知っているか?」


「はい、今の第一皇妃様ですね。魔法を解いて美しい女性が現れた時はびっくりしました」


ヨハウスは俺の結婚式に来賓として来ていたのだ。


「そろそろ気がつくかな?この本の秘密に」と俺。


「「・・・・」」


「あ!ツクヨミの加護!」


先に気が付いたのはゲレイドだった。


「ヨハウス王、あの時、俺の妻は歳をとっているように見えたか?」


「いいえ、15歳に見えました。」


「ついでに言うが、俺の妻、レムリアは俺の乳母だ」


「「ええ?」」と驚くヨハウスとその周囲の側近たち。


「ここで気が付いたかな」


「まさか・・」


「そのまさかだ。この本2冊にも同じ加護がかけられている」と俺。


「1冊は、ヨハウス王に開けられて、1冊は開けられなかったんじゃないかな?」と俺。


「はい・・なぜそれを」


「そして、言い伝えはどうなっている?」


「古の龍が現れた時、再び本は開くと」


「では、その本、2冊を俺の前においてくれ」


「はい」


俺の前に2冊の本が並べられた。



「1冊は、この国を建国した王の書だな。もう一冊は、その母の書だ」


「なぜそれを?」とヨハウス。


「1冊は、初代アレステア王の書ですが、もう1冊は代々、誰にも開けられなかったと・・ゆえに誰の書かも私は知りません」とヨハウス。


「ふむ、では2冊とも俺が開けて見せよう」と言って俺は2冊とも開いた。


「「・・・・」」絶句する2人とその周囲。


「な、なぜ・・・」と絶句するヨハウス。


「そりゃそうだ、おれの前世が初代アレステア王カルロスの親父だからな」


「「ええ~っ???」」


「言い換えれば、カルロスの母、カリエスの影響だな」


おれは、過去にあった話をし始める。


俺が地上に降りて間もないころだ。空腹になった俺は行き倒れてしまった。


そこに現れたのはカリエスと言う少女だった。


カリエスは俺に1杯の粥をくれた。


この時、カリエスたちは虐げられた存在で、自分たちの残り少ない食料の内、なけなしの1杯を俺にくれたのだ。


俺は、生気を取り戻す事が出来たのだが、返礼にカリエスたちを保護することにした。


そうこうしているうちに俺とカリエスの間に生まれたのが初代アレステア王カルロスだ。


カルロスは龍の血は引いていなかったので金色の髪にはならなかった。


そして、俺は彼らを保護し、カルロスに国を建てさせたのだ。


「さて、ヨハウス王。もう1冊の方を読むがいい」と俺。


「今まで開く事が出来た本はカルロスの日記だ。もう1冊はカリエスの日記だ」と俺。


「はい」と言って読みだす。


一同その間黙って待っている。


「何と書いてある?」と俺。


「再び、国が危機に瀕したときに国を救う龍が現れれば、その時の龍の言葉に従うようにと」


「そして、この書を開く事が出来るのはカリエスとその夫のみであることも・・」


「そして俺が現れた」と俺。


「はい」


この言葉を聞いて、一同が平伏してしまう。ここにいる皆は俺が龍であることを知っている。


「では、ヨハウス王、その書に従ってくれるな?」


「はい」


「では、これより、アレステアはムルマーシュ帝国の属国になれ」と俺。


「「「えええ??」」」と驚く


「ムルマーシュは帝国だ、皇帝の下に付くのは王だその一人となれ」と俺。


「しかし、国は・・」とヨハウス。


「うむ、お前の領地は今のこの国と、今回攻め取ったガエワスとしよう」


「領地が広がるのですか?」


「うむ、但し俺達が欲しがっていたのはガエワスの銀山と銅山だ。これ以外をお前たちの領地にするがいい」


「それと、通貨を統一する。もともと関税はなかったし、商人どもが交換するのが面倒くさいので、それが交易の妨げになっているとぬかして居った。銀山と銅山の採掘はお前に任せるから、そこから出る銀と銅は精錬して皇都に運ぶと良い。その採掘はお前に委託することにし、それにかかわる費用は帝国から支給されることになる」


「つまり、労働者の雇用も兼ねているという事ですか?」


「そういう事だ。あと、銀と銅は皇都で貨幣に鋳造される。俺たちは金だけはしこたま持っているが銀と銅は持ち合わせが少ないのだ。これで、末端の民にも貨幣が十分流通するという事になると、この地の交易量も大きく伸びるという事になる」


そして、翌年の年の初めの日、アレステアはムルマーシュ帝国の属国になったのであるが・・。


「陛下?私たちの前に浮気してたのですね?」とレムリア。


「ううう・・でもお前達とは100年、歳が違うぞ。それとお前たちに出会う前だし浮気とは言わんぞ」と俺。


なんとか、認めてもらう事にした。


だが、数年後思わぬ事態になることも知らずに・・

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