第4話 思わぬ大漁

「陛下!大変でございます!運河を大量の魚が埋め尽くしております!」


ある日、執事の一人が執務室に飛び込んできた。



「何事だ?」


「はい、大量の魚が運河を水の来る方向へとさかのぼっています。」


そして1匹の魚を俺に見せた。 俺は以前、皇宮の書庫で見た本に書いてあった鮭だ・・



そこへ爺様がやってきた。


「お前、運河を作る際に、川も整備しただろう?」


「はい」


「龍の加護を受けた川で生まれた鮭が大繁殖したのだな。これから毎年この光景を見る事が出来るぞ」


「それと、運河の各所にある領主どもに連絡しておいた方が良いな。採りすぎはよくないから、釣り竿での漁のみ許可した方が良いじゃろ。」


「では早速そのようにしましょう」と俺。



しかし、釣ってもきりがないほど釣れてしかも上流の産卵場所も鮭で埋め尽くされていた。



「これは来年も来るな」・・と俺。



商人子弟は・・「陛下、塩の在庫がかなり少なくなってしまいました。塩の生産の強化をお願いします。」と泣きついてきた。


俺が貸し与えているマジックポーチに、鮭を塩漬けにして保管することにした。


「来年も来るようだから、来る前に全部在庫はかしておいた方が良いぞと念を押しておいた」



塩の生産はというと、国内にある塩湖から取っているので塩田を増やすように指示した。


運河から農耕地が広がり、牛、馬の生産量も増えたので一気に食糧事情は改善された。


これに鮭と言う新たな蛋白源も増えたのだ。


あとは貨幣か・・



そんな折、隣国のアレステア王国が隣国のガエワス王国の侵攻を受けたと一方が入った。


アレステア王国は俺が前世で建国を後押しした国なので、龍の信仰も厚く、長期にわたって友好関係を築いている国だ。


建国に当たって、ガエワス王国の国土の半分を切り取ってしまった為、アレステア王国を属国だとしか思っていない。


最も、アレステア王国の建国はガエワス王国で虐げたれた人が多数いて、そのための独立戦争だった。

つまり、当時のガエワス王国にとっては、俺の国も敵なのだ。



アレステア王国が俺達と商取引をするため豊かになったことを恨んで、千年前の国土を復活するのだと名目を立てたうえで攻め込んできたのだ。


ここで、「どうしたものかな?」と考えていたら。


「陛下、ここは攻め込んでみては?」とゲレイド。


「どういう意味かな?」と聞く。


「ガエワス王国には銀山、銅山があります。それらを手中に収めれば、貨幣が作れます」と。


龍は金を持っていても銀と銅は少ないのだ。


つまり、小銭を使った流通がうまく機能しなくなるという問題を抱えていたのだ。


「だが、名目はないぞ」


「そんなもの幾らでも作れます。『千年前の国土を復活するのだ』というなら、『2千年前の龍の約束を果たすのだ』という名目を勝手にでっちあげるのです」


「それはまずくないか?」


「2千年前って誰も生きてませんよ」


「確かにでも、遠征となると、大筒は運搬が大変だぞ。」



「そこは、火薬職人が面白いものを作ってくれました」


「なんだ?」


「少々お待ちを・・近衛のアルセア侯爵に例の品を持ってくるように伝えてくれ」


アルセアが小型の筒と、フィンの付いた細長い玉を持ってきた。


「これはなんだ?」


「先日の花火の改良版でございます。」とアルセア。


「筒を立てた状態で、羽根の付近に付いた導火線に火をつけて羽根を下に向けて飛ばせば、中で飛ばすための炸薬に火が付き、上に飛んでいきます。そして、ある程度上空に達すると空気の影響で羽を後ろにし、先端を地面に向けて落ちてきます。花火の時には色のついた火薬が中に充填してありましたが、炸薬と小さな鉄球を多数仕込んでおくと、地面にこの部分が接触し、中で火花が発生し炸薬に火が付くわけです、あとはドっカーンと破裂し鉄球が四方八方に飛び散ります。」


「大筒の砲弾に方向性を持たせたのか?」


「はい。滑空するので滑空榴弾と名付けました。」


「で、飛距離は?」


「凡そ4kmです」


「飛びすぎだな」


「筒の角度を高くすればかなり近くにも落とせますよ」


「訓練はしたのか?」


「はい」


「根回しがいいな」


「まあ、備えあればなんとやらです」とゲレイド。


「確かに」


「あと、馬の方も音に驚かないように訓練してあります」


「つまり、砲兵騎馬隊が作れると?」


「はい、1人10個の榴弾と、1つの筒を持たせる事が出来ます」


「指揮者1名、観測者1名、測量者1名、周囲警戒者2名、砲術士2名で班編成だな」


「そうすると1班70個の榴弾を運べますね」


「近衛だと何班出来る?」


「今回の戦いに投入するのであれば、10班で70人の確保でよいかと」とアルセア。


「どういう事だ?」


「榴弾の製造が間に合いません」


「なるほど」


「じゃそれで進めよう」



10日後、俺たちは、ガエワス王国に宣戦布告し、騎馬で一気に王都を占領した。


この時、ガエワス王国の城にいたものは全員自害した。


つまり、アレステア王国に攻め入っている間に落としてしまったのだ。



あとは、アレステア王国と俺たちの挟撃戦だ。


ここで、砲兵騎馬隊の出番となり、榴弾の雨を降らせ全滅させた。


俺たちは、鉱山を手に入れたのだった。

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