第5話 開戦&兵糧攻め

翌日の深夜、47家の貴族が皇都から忽然と姿を消した。



俺は彼らにマジックポーチを渡してあったので、家具家財の一切を詰め込み各所領へと向かわせたのだ。


それを見計らい、皇都の全門を閉めた。



皇城は一般市街への通じる扉を除き全閉鎖。一般市街は皇城への扉を除き全閉鎖。


貴族街は皇都から外へ通じる扉以外を全閉鎖したのだ。



貴族の家は俺に敵対の意志のある家を除き、全てプロテクトをかけ、外からも中からも出入りできないようにした。


敵対意志のない25家といっても下級貴族だが、彼らの家には3か月分の食料を昨晩の間に運び込まれている。


一般市民に対しては3か月分の食料を配給制にしているので彼らは食糧不足に陥ることはない。


また、市民全員に3か月分の所得補償も同時に行った。



さらに、子飼いの商人子弟に敵対する貴族の領地で食料の大人買いをさせたのだ。


彼らにもマジックポーチを持たせ、高額な金額で次々と購入させ、畑になっている作物もまとめ買いさせたのだ。そして、市街へと紛れ込ませた。


マジックポーチに国土の半分の食料が蓄えられているので、一般市街は閉鎖されていても食料が潤沢の状態だった。



皇城と市街地の井戸は俺達が魔法をかけているので、枯れることはない。


これ以外にも子飼いの47家、さらには敵対意志のない25家にも同じ魔法をかけているのでこちらも水の心配はない。


そして俺は、敵対貴族56家の井戸を全て空井戸にしてしまった。


そして彼らは、自らの領地へと向かった。食料と水を得るために。


3日後、敵対56家が皇都外に出たことを見計らい、皇都の周囲に結界を張り、外から入れないようにした。


そして、皇都内のプロテクトをすべて解除した。


残った25家に対し、母は登城するように勧告し、そのすべてが翌日の朝登城した。


ここで、彼らにはすべてを話したわけだ。


同時に、彼らに指示し、敵対56家の接収を行わせた。


意外と美術調度品が多く残っていたので、美術に詳しいご老体の貴族に管理を任せることにした。龍は金を集めることが好きだが、この手のものは人に任せるに限るという事で、ウンチクに詳しいご老体の様な者に管理してもらうのが便利なのだ。あとで、帝国美術館をつくるから、そこの館長になってくれと言ったら涙を流し喜んでいた。


最も、彼ら自身、当主が老人や病弱であったり、幼少であったりしたわけで、身動きできない者たちだった。


詳細を知った彼らには、忠誠を誓わせると同時に領地安堵を確約した。


誓約後に、病弱な者にはアリエスが魔法で治療を施し、ほぼ全快になり、幼少の者は俺の母が後見人になり教育は俺の子飼いの教師たちに任せることにした。



さて、自分の領地に向かった貴族はと言うと、俺の子飼いの者、47家は戦闘態勢を整え終わっていた。


一方、敵対56家の方は悲惨な状態に陥っていた。


金はあるのだが食料が無いのだ。


ここで俺はうそを流した・・俺が食料を買い占め、子飼いの貴族の領地に運んだと。


さらに、王都でも買い占め、上皇は食料確保のため討伐を指示する予定だと。


案の定、彼らはアームスを首魁に立て貴族連合軍を組織した。



そして、俺が逃げ込んでいる先は、ゲレイド侯爵のアリエッタ城だと噂を流した。



「さて来ますかな」とゲレイド侯爵。


「まあ、来るでしょう。ご飯欲しさに」と俺。


意外と、あっさり3週間でほぼ3万人の貴族連合軍が目の前に現れた。


そして、彼らは河原のわきの道を歩いてきたのだ。



「こ、こいつらバカか?」と俺。


「やはりバカでしょうな」とゲレイド。


「こんな目立つところを歩いて、矢の的になってくれと言わんばかりじゃないか?」


「でも、矢より面白いこと考えてたでしょ?」


「うむ。矢を無駄にしては作った職人さんに申し訳ない」と俺。


「そこですか?」とゲレイドが笑う。


「そろそろ飯時だな、彼らはあそこで野営するみたいだ。」


「あんなところで・・やはりバカですよね」


「バカだね。寝静まったころ、作戦実行だな」


「はい」



そして、深夜、洪水が彼らを襲ったのだ。



俺が、2週間前、上流に土魔法を用いてダムをつくる。


そして、深夜に爆破し決壊させたのだ。


一気に敵軍を洪水が飲み込む。ほぼ1/3壊滅させたのだ。



「さて、想定される戦場はと・・」


「この先に古戦場があり、おそらくそこで対峙するのがよろしいかと。」


「大砲は隠せるか?」


「はい、既に30門隠しております。


「意外と多いな」


「まっすぐ向かってきたので、周囲からちょっと集めました」


「ふむ、じゃあ、古戦場に入ったら出口をがけ崩れを起こし塞ごう。あとは各自自由砲撃とする」


「はい」


そして俺たちは入り口を塞ぎ、逃げ道を無くした。


あとは900発の砲弾の嵐だ。


咆哮が鳴りやんだ時、そこには立っているものが一人もいなかった。


あるのは、ただの肉片と金属片のみだった。


「これは惨いな」


「はい」とゲレイドは顔をしかめる。


「仕方ない、俺が大魔法使うか・・」


「魔法ですか?」


「まあ見て居ろ」


「ランドスライド!」(山津波)


地面がうねり、肉片と思しきものは土の中に消えていった。


「最初からこれを使えば?」


「いや、それをやったら、お前さんたちの出番がなくなるだろ?」


「はあ」


「奴らの領地分割する時にお前だけ功績がなくなり困る」


「あ、御気遣いありがとうございます」


「あとは城攻めだけだから、お前の出番はここまでだし」


「ほかの連中に城攻めを開始せよと伝えてくれ」


「御意」



こうして俺たちの初戦は一兵も失うことなく大勝利に終わった。

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