第6話 内戦終結と俺様の結婚式
後で知ったのだが、先の戦いでの敵将はレイモンド伯爵だった。
エストラント子爵は洪水で流され溺死体で発見された。
敵対貴族56家のうち34家が先の戦いに参加し敵主戦力の8割を無くしていた。
あとは下位貴族だけだ。
俺達は、ここで掃討戦にかかった。
2貴族で組ませ遊撃用に各5門ずつの計10門の大砲を持たせ、挟撃戦を行わせたのだ。
先の戦いの最中、俺の子飼いの貴族に対しても戦いが仕掛けられていた。
彼らは境を封鎖し、周囲八方に大砲を置いたのだ。
境を突破しようとすると大砲の餌食となり、更に地面はえぐれ、炸裂した弾頭の音に馬が驚くので突破はできなかった。
これ以外にも落とし穴など盛りだくさんの仕掛けを作らせておいたのだ。
持久戦になると俺たちの方に分がある。敵方は空腹なのだ。
兵の脱落を招き、少人数になった所を一気に騎馬隊で敵陣地を制圧し、貴族を捉えていった。
さらに俺の子飼いの貴族は学生時代に魔法で脳神経が強化され、知能犯の集団だ。敵貴族に対し遥かに知恵の周る智将だらけだった。
四方から責められても、あの手この手で防いでいる。
そこに子飼い2貴族の軍を敵の背後に投入し、挟撃戦を行わせたのだ。
遊撃している敵兵を除去すると次は城攻めだ。
といっても降伏勧告した城の前で胡坐をかいているだけ。
城の食料は多くないので尽きるのが早い。
降伏して出てくるか、餓死するかだ。
下位貴族はほとんど降伏勧告に応じたが、大半の上位貴族は一族郎党が死を選ぶことが多かった。
俺達にとって、最大の問題はアームスだった。
ある日、親父と母は俺に一通の手紙を残し、母の龍に父が乗り飛び立って行った。
「いざというときは、俺に封書を開封せよ」という言葉を残し・・
「これは俺達がまいた種だと」手紙には記されていた。
爺様は「あの二人に任せておくがいい」と俺の肩を叩いた。
父と母の出した結論は、アームスの幽閉だった。ただし、幽閉先は異なる。
幽閉と言っていい代物かどうかはわからない。
アームスを隠された村に連れて行くというのだ。
つまり、人の世界とは隔離してしまおうというわけだ。
父母の悔いていたのは5歳でアームスをカグツ家に出してしまったことだ。
これさえなければ国土を血で汚すこともなかったかもしれない。
ましてや、俺に弟殺しの汚名を着せたくないとの配慮からだった。
アームスに至っては未だ妻はいない。俺は母に理由を聞かされている。
自らの血が、周囲で善からぬ事に使われかねないからだ。龍の血が混じっているため、人のドロドロとした感情が感覚的に伝わってくるのだ。
戦が始まった時、龍の血が戦を拒んだのだが、アームスの意志とは裏腹に勝手に首魁にされてしまった。
そこで、アームスを説得に出かけたというわけだ。
そして、アームスは母の龍に乗り、隠された村へと連れていかれた。
身元引受人は、俺たちの祖母の実家が引き受けてくれることになった。
祖母の妹の孫娘が15歳になるため、娶わせた。
これで下界の喧騒も気にすることなく暮らす事が出来るだろう。
これを期にカグツ家の歴史は終わってしまった。
親父は「まあ、俺が選んだことだ。だがカグツ家の血は絶たれたわけではない。お前は俺の子だから皇家が存続する限りカグツ家の血も存続するのだ」と言って泣きながら俺の頭をくしゃくしゃになるまで撫でた。
これからは俺の時代だ。
この時、俺は16歳になっていた。
翌年の始まりの日、母は譲位し上皇になった。
そして俺は16歳で皇帝の地位に就いた。
新年1日目は俺の戴冠式、2日目は法の発布、3日目は俺とレムリアの結婚式だ。
皇宮には先の戦いに参加したものと、王都で俺に忠誠を誓った貴族、俺の教え子が集められていた。
この中で俺の戴冠式が行われたのだ。
2日目は法の発布と貴族の任命。
基本的には、皇都の周囲5方に1侯爵づつ置くことにした。
ゲレイド侯爵は北方に位置するのでそのまま領地を引き継がせ、さらに若干、領地を増やした。
さらに、本人を宰相の地位にした。
あとの5侯爵は先の戦いで戦闘に秀でたものつまり自分の持つ兵力に対し期待以上の戦闘を行った者を5人選択し、侯爵に任じ残りの4方に内4人、皇都に1人を配置した。
後の国つくりの為の配置だ。
まず、5方に大型の衛星都市をつくる。しばらくは侯爵を受けた者は出張することになるがこの5つの衛星都市を管理するものが侯爵の位を継げるというものだ。
なぜこのような仕組みを作るかと言うと、現状では特定の地域だけが発展し、先の戦いで敵対していた貴族の領地だけが取り残されてしまう。
地域格差は不穏分子の発生にもつながりかねない。そこで、5つの大型都市を作り地方との流通をよくしようとするものだ。
この衛星都市の更に周囲と皇都を結ぶ線は孫衛星都市を配置するというものだ。
孫衛星都市は侯爵以外の者が整備することにしている。
宰相を兼任するゲレイド以外の新侯爵には財務長官、司法長官、皇都行政長官、近衛師団長官、教育長長官を兼任させた。
この衛星都市をつくる資金は俺が出した。何せ龍は金持ちだから。
資金が気になるといけないので侯爵連中に見せたら・・「陛下、大盤振る舞いはお気を付けください。インフレになりますぞ」釘を刺された。
都市建設の進捗は彼らに任せることにし、俺は都市間の交通網の整備を始めることにすることにした。
ここまでが、事前に決まっていたことだ。
そして3日目、俺はレムリアとの結婚式に臨んだ。
結婚式と言っても内々には結婚しているので披露宴と言う趣だ。
隠された村から長老とその家族を呼び司祭代わりにした。
ここで、俺の母が1つ魔法を解いた。
レムリアにかかていたウズメの加護だ。
結婚式の誓約の儀の前に俺達2人と母が壇上に上がった。
衆目の中、レムリアにかかっていたウズメの加護を解いたのだ。
ウズメの加護は、特定の者以外には醜女に見える魔法だ。
解かれた瞬間、美しい少女が現れたのだから一瞬場内は静まり返ってしまった。
そして、大歓声が沸き起こった。
その後、レムリアには俺の母から皇妃の冠、つまりティアラが頭に載せられ、俺とレムリアがキスをして式が終わった。
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