第26話 その後

「ネイト・・・・・・どこにいるんだ」

バルトは森の中の枝や木を掻き分けてネイトを探した。

しかし、見つかる事はない。

「・・・・・・レイもネイトも居なくなっちまうし・・・・・・どうすればいいんだよ」

バルトは立ち止まり弱音を吐いた。

「レイは本当に諦めたのかな・・・・・・」

仲間を失って感じる虚無感。

これは二度目だった。


「・・・・・・、おかしな話だな、やっぱり助けられてるのは俺なんだよな」

バルトは夜遅くまでネイトを探し続けて疲れてしまっていた。


「悪魔と一緒に居て大丈夫なのかな・・・・・・、でもネイトの事を気に入ってたみたいだしネイトに危害が及ぶことはない・・・・・・よな?」

自分に言い聞かせるしかなかった。

「せめてレイが居ればなぁ・・・・・・、あの時、引き止めれてたら・・・・・・」

結局バルトがネイトに会えることはなかった。


数カ月後、田舎の街で獣人の姿となって滞在していたバルトは新たな勇者が現れた事、そしてネイト以外の手配が取り消されたことを知る。

「俺がネイトを探してる間に何か動きがあったのか?・・・・・・もしかしてレイが何かしたのかな」

手配の取り消しを聞き、急いで王都へ向かった。

「お前は手配されてた・・・・・・、話がある来るんだ」



王都の国王部屋に呼び出された、バルトは苛立ちを隠さずに居られなかった。

ネイトを歪めたのは王家の人々のやり方だったからだ。

「どういうことだ、なぜネイトの手配も解除しない!?、それになぜ今!?」

焦り、不安、怒り。

色んな感情が爆発していた。

数ヶ月の間何の成果も得られないまま、いきなり事態が動き出したのだ。


「・・・・・・勇者、来てくれ、話を頼む」

そこにはライアンの姿があった。

「・・・・・・、それでなれたってのか、勇者に」

バルトは少し驚いた、だが以前よりもライアンは穏やかになっていた。

「なれたよ、心を入れ替えたおかげだ」

だが、ライアンの目はそんな事問題じゃないといった、深刻な顔だった。

「それで、なんでなんだ?」

ライアンの表情を見て、不安になりつつも、ともかく聞いてみるしかなかった。

「ネイト・・・・・・、いやネイトと言っていいのか分からないが、ともかくそれらしき奴が、魔王の軍との衝突の時に居たという情報があった、何があったのかは知らないが今お前らはネイトとは一緒にいないな」

その話を聞いてバルトは困惑した。

「いくらなんでもネイトが魔王の手下になんかなるはずない!」

「わかってる、俺だって奴を信じたい、恩人なわけだしな、だから王に頼んで手配を解除させた、お前らならきっと解除すれば何かを掴もうとここに来ると思ったからな」

ライアンはそう話すと、兵士達に部屋を出て行くように合図をした。

「なんだ?」

「・・・・・・正直な話、王にも人間にも失望した」

ライアンの言葉はあまりにもいきなりだった。

「おいどういうことだよ」

「ネイトみたいにされるのが怖かったから、王の命令は聞いてきた、それに国に居られなくなれば人を助けれなくなるからな」

ライアンは王の部屋の宝物を見て、溜め息をついた。

「王は思うほど、王たる器を持ってはいない、ネイトは魔王に未来を託そうとしたのかもしれない」

「でも魔王は人間をたくさん殺してる、魔物の為の未来だろ!」

「それでいいと思えてくるんだ、命に優劣なんてつけれない、もしこのまま魔王を倒しても人間はきっと自分達で争う、そんなくらいならいっそ・・・・・・」

ライアンも勇者の力の代償として声が聞こえるようになっていた。


「お前の口からそんな言葉を聞くなんて・・・・・・変わったな」

「バルト・・・・・・、俺はどうしていいかわからない、一人じゃ抱え込めないんだ、教えてくれ、俺はどうすればいい、ネイトを探し出し、もし奴が魔王の手下になっていたら、俺は倒せる自信がない」

ライアンは以前のような心の力強さを失っていた。

「考えすぎてわからなくなってるんだな、ネイトもそうだった、一つだけ言えば、魔王も王も変わらないさ。目的の為なら何でもするという点でな」

バルトは扉の方へ歩いていった。

「帰るのか?お前の答えを教えてくれ」

ライアンは道しるべを探そうと必死だった。

「ネイトに会いに行く」

バルトは魔界への行き方を知っていた。

魔族を裏切ったバルトにとってはあまり行きたくない場所だったが、行くしかなかった。

扉を開けるとレイの姿があった。

「・・・・・・、バルトか」

斥候のローブはボロボロで、浮浪者のような姿で、顔を隠すためのマスクを持っていた。

「レイ・・・・・・、ネイトを今度こそ助けよう」

「・・・・・・、これはケジメなんだ、この一件が終わったら二度とお前にもネイトにも会わない」

レイはよほど後悔してるようだった。

「俺のせいだ、俺があんなこと言ったから・・・・・・、俺が連れ出したから」

「考えても仕方ないさ、それにレイが居なかったら俺はとっくに死んでたよ」

二人は準備を終えると王都を出た。

「待ってくれ、俺も知りたいんだ、奴は魔王の手下になったのか、それとも違うのか、ネイトは何を考えてるのか知りたい・・・・・・ネイトを助けるなんて大層な事は今の俺には考えられない・・・・・・俺の為だけど、俺も連れてって欲しい、そっそれに戦力にはなるからっ!」

ライアンは光の灯った聖剣を見せた。

「わかったよ、それって後で拾ったのか?」

「・・・・・・、戦ってきた仲間だからな、結局探し出した」

「仲間・・・・・・か」

三人は魔界へと歩き出した。

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