第24話 崩れていく物

「・・・・・・お前らには聞きたいことがある」

ライアンはネイトを睨んで言った。

「・・・・・・ごめん、謝ってもすまないと思うけど・・・・・・」

ネイトは、自分が人を殺しかけたことに重い罪悪感を感じていた。

「気にするな、俺も殺されかけたからな」

バルトはライアンを見た。

「教えろ、どうして魔物を助けた?」

「それは、あの子が死ぬのを怖がってたから・・・・・・」

ライアンはそれを聞いて、徐々に機嫌を更に悪くしていく。

「魔物にどうして慈悲を与える!?」

「もう悪い事はしないよ・・・・・・、きっと・・・・・・」

ネイトは信じていたが、それでも衝動には勝てないというリリスの言葉、そして何より自分ですら勝てなかった事に自信を無くす。

「確証も得てないのに・・・・・・、魔物を逃がしたのか!?」

「それでも・・・・・・、あの時聞こえたんだ、まだ死にたくないって・・・・・・」

これ以上話を続けても無駄だと思ったレイは少し咳払いをした。

「お前はどうしてそこまで、魔族とか魔物とかを嫌うんだ?」

レイはライアンに問いかけた。

「それは、俺の家族が魔族に傷つけられたからだ、だから俺は許さない」

ライアンは剣を取った。

「お前らとは分かり合えない・・・・・・!」

『殺しちゃえばいいよ、こんな奴』

リリスがネイトに呟く。

ネイトの感情を操り殺意を暴走させていく。

ライアンが仲間に何をしたかを鮮明に思い出していく。

「だめ・・・・・・リリス」

ネイトは蹲り頭を抱えた。

「おい、ネイトどうしたんだ!?」

バルトは心配そうにネイトに話しかけた。

「何をしているっ、戦え!」

ライアンは剣に炎を灯した。

「どうして、お前が聖剣を持ってるのか、聞いてなかったな」

レイはダガーをライアンに投げた。

「黙れっ!」

ライアンは剣でダガーを跳ね除けた。

「人間だろうが、俺は殺すっ!!」

その時だった、ライアンの持っている剣が吹き飛ばされる。

ネイトがライアンの剣を力強く蹴り飛ばしたのだった。

「もう・・・・・・いいだろ」

ネイトは殺意を抑えながら言った。

「ネイト・・・・・・様子が変だぞ?」

バルトは心配そうに見た。

「こんなものがあるから、君は僕の仲間を傷つけてしまうんだ・・・・・・」

ネイトはライアンの剣を取った。

すると剣は光に包まれた。

不思議と温かい感覚に包まれる。

「本当のようだな、お前が勇者っていうのは・・・・・・」

ライアンはそれを見て、悔しそうな顔をした。

「これは・・・・・・?」

ネイトはその剣を見た。

『ネイト君・・・・・・、それ離して・・・・・』

リリスの苦しそうな声が聞こえた。

ネイトがその剣を離すと、剣は光を失った。

「その剣は、ネイトが持つべき剣だ、なぜお前が持っている」

レイはライアンを冷たい目で見た。

「王家が、代わりの勇者を探したんだ・・・・・・、俺も勇者になれるはず・・・・・・なのに、なぜ、その剣は俺を拒絶するんだ・・・・・・」

ライアンが剣を取ると剣は激しく燃える。

現実を突きつけられるかのようだった。

何かを守る為の力と、それを守る為の硬い意志を求めて生きてきた。

その結果、拒絶されるのなら、自分が歩んできた道はなんだったのだろう。

ライアンの頭の中が虚無で埋め尽くされていく。

「もういい・・・・・・、何もかも」

ライアンは剣を捨てて歩き出した。

「どこへ行くんだ?」

レイが尋ねるとライアンは

「もう俺は疲れたんだ、ネイト・・・・・・、敵としてではなく、一人の人間として最後に聞きたい・・・・・・、お前の中に居るソレは、大事なものなのか?」

ライアンは立ち止まり振り返った。

「とても・・・・・・大切だよ」

『・・・・・・ネイト君』

そのやり取りを聞いて、バルトの疑問は確信に変わっていく。

「ネイト、やっぱりお前の中に何かいるんだな」

バルトはネイトを見つめた。

「・・・・・・悪魔がいる、でも僕の家族なんだ」

リリスはいつのまにか、ネイトの感情を自由にしていた。

『家族・・・・・・』

それは確かに、リリスが欲しかったものだった。

「ネイト・・・・・・正気か!?」

レイは今まで悪魔の虜となった人間を多く見てきた。

ネイトが危険な状態だとレイは思った。

その時、ネイトの中から黒い霧のようなものが出てくる。

そしてそれは形作り、リリスの姿となった。

「悪魔・・・・・・、本当に悪魔だ」

バルトは不思議そうな目で見た。

「・・・・・・、ネイトをおかしくしていたのはお前か」

レイはリリスを疑っていた。

「ネイト君は渡さない・・・・・・」

リリスはいつしか、ネイトに執着し始めていた。





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