第16話 成り損ない
「ぅぅああああ!」
森の中でそんな叫び声が聞こえた。
だが、ネイトの能力でしか聞こえてないようだった。
「なんだこの感じ・・・・・・」
ネイトは採集する手を止めて、声の方へと走っていった。
向こうも近づいてくる気配がした。
そして現れたのは、白髪の少年だった。
「お前が俺を呼んでいたのかぁぁ!」
白髪の少年は持っていた剣をネイトに振り下ろす。
ネイトは素早く避けるが白髪の少年は、動きが常人のそれではなかった。
「僕は呼んでない・・・・・・君の声が聞こえたから・・・・・・」
ネイトの言葉を聞いて白髪の少年は手を止める。
「悪魔の声が聞こえる・・・・・・!」
白髪の少年は叫んだ。
ネイトは動揺した。
気づかれている、内に潜む悪魔に。
「ネイト君・・・・・・あいつからは、何か妙なものを感じる・・・・・・」
リリスは言った。
「僕もだよ・・・・・・」
心の中でネイトはそう呟いた。
「悪魔と何か話してるな?」
白髪の少年は剣を強く握る。
すると白髪の少年の剣を持つ手から蒸気が出ていた。
とても熱いものに触れたかのように。
「うわぁぁぁぁ!!」
少年は叫び剣は炎を帯びた。
痛みが伴っているようだった。
ネイトはその少年の剣の大振りを避けるが、剣は炎の衝撃派を放ち、ネイトは直にその衝撃を受けてしまう。
「何これ・・・・・・苦しい・・・・・・」
リリスが苦しそうに叫ぶのが聞こえた。
「やめてよ!お願いだから・・・・・・」
少年はそれを聞いて更に苛立ち始めた。
「煩い・・・・・・お前ごと悪魔を殺す・・・・・・」
少年は何度も剣を振るった。
避けるたびに少年の体力が消耗していき、息を荒くしていく。
「もうやめなよ・・・・・・その剣・・・・・・普通じゃないよ?」
ネイトは少年に少し怯えながら言った。
「お前・・・・・・ただ、悪魔の虜になった獣人ではないな?」
少年の剣から炎が消える。
「僕は・・・・・・勇者だから・・・・・・」
その言葉を聞いて少年は苛立つ。
「お前が・・・・・・?勇者なのにお前は悪魔を内に匿っているのか!」
少年は激怒し、剣に炎を灯すが力を失い倒れこんでしまう。
「どっどうしよう・・・・・・」
それを見てネイトは酷く驚き慌ててしまう。
涙目になりながら辺りをうろうろしながら、やるべき事を考えた。
少年の剣を鞘に戻す時、その剣を持つと剣に炎が灯った。
「なんだろ・・・・・・この剣」
ネイトは不思議に思ったが少年を背負って歩くのだった。
「あの・・・・・・大丈夫ですか?」
少年が起きると宿屋の一室だった。
「誰だ・・・・・・お前!?」
目の前には同じ歳くらいの少年の姿。
水色の長髪の髪とその力の無い脱力しきった、だが優しい目。
誰かに似ていると感じた。
「ごめん・・・・・・さっきの獣人だよ・・・・・・」
それを聞いて、少年の推測は、確信に変わる。
「お前・・・・・・俺を助けたのか?」
白髪の少年は少し穏やかだった。
「うん・・・・・・落ち着いた?」
ネイトはお絞りを交換していた。
白髪の少年はそれを持つネイトの手を払いのける。
「優しさなんか嫌いだ」
そう言って少年は部屋を出ようとする。
そう言い放った赤い目が、伸びきった前髪からちらりと見えていた。
「待って・・・・・・事情は言いたくないなら聞かないけど・・・・・・せめて名前だけでも」
ネイトは呟いた。
「・・・・・・ライアン」
そう言って、ライアンは居心地が悪そうに宿屋を出て行った。
「なんだか、僕と似ていて・・・・・・違うものを感じたような」
ネイトは胸に手を当てた。
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