第11話 心の声

「ここ、大丈夫‥‥‥‥かな?」

しばらく正気を失っていたネイトは状況が分からず不安そうだった。


「鍵閉めてるから気にすんな」

レイは、壁にもたれて腕を組んだ。

「あのさ、ネイトは、勇者として何がしたい?」

バルトは真剣な表情で見つめた。


「助けを求めている人を助けたい」

ネイトは真剣な目をしていた。

「でも、何かを傷つけないとそれができないとしたら?」

ネイトは、答えられなかった。

俯いて手を握るだけだった。

そして悲しげな顔をした。

「じゃあもし、勇者をやめれるとしたらどうする?」

ネイトは震えた。

心が揺らいでるようだった。


「でも、僕が戦わないと‥‥‥‥」

「お前はどうしたいんだよ」

バルトは言った。

「わからない‥‥‥‥」

ネイトは困り果ててしまった。

「迷ってただ苦しむだけなら、それでお前がおかしくなっちまうくらいなら、勇者としてのお前を忘れろ!」


少しの沈黙の後だった。

「‥‥‥‥もし自由になれるなら」

ネイトがその時初めて口にした。

「勇者をやめて‥‥‥‥ただ普通に生きたい、

笑いたい、忘れたい、悲しいのは嫌だ‥‥‥‥」

ネイトはまた泣き出してしまった。

バルトはその時にこりと笑った。

「素直になったな」

ただ優しくバルトはそう言った。


「でも、勇者じゃなくなれば、目の前の人を助けられないかもしれない」

ネイトは、弱々しく呟いた。

「勇者じゃなくなれば‥‥‥‥僕は、助けに気づけないかもしれない‥‥‥‥助かるはずだった色んな人を犠牲にすることになるんだ、僕にはそれが耐えられない」

ネイトがその時何か恐ろしいものを知ってしまったという顔をした。


「どうした!?」

「いかないと‥‥‥‥」

ネイトは宿屋を抜ける。


街の中に一つの風が吹き抜ける。

それはネイトだった。

二人には追い付ける速度ではなかった。

この街にある墓所にネイトは来ていた。

そこで、青年が黒いローブを着た少女に血を捧げていた。

少女は、血を飲み干し青年は倒れた。

「悪魔‥‥‥‥、人の心を操って‥‥‥‥」

ネイトは、剣を構えた。

「誰かと思ったら、ネイト君じゃん」

邪悪で純粋な赤い目でこちらを見つめてくる。

「リリィ‥‥‥‥」

その悪魔の少女はため息をついた。

「私の事殺せなかった、弱虫君だね」

ネイトは恐怖に支配された。

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