第7話 理想像
ドアはいきなり開いた。
動くのもままならなくなったネイトの為に看病をしていたレイだったが、王国の人間が来てしまったのだ。
「勇者に薬を与えてないだろう、それに魔王討伐も進展してないようだ」
大柄の騎士のカイネスはネイトに近づく。
「カイネスさん、この子を自由にしてやってくれ」
レイはカイネスの前に立った。
「国を守るためだ・・・・・・」
カイネスを掴み壁へ強く投げた。
「ぐ・・・・・・貴方ほどの人が国の犬ですか」
それを聞いてカイネスは不愉快極まりないといった顔をした。
「勇者がやっと・・・・・・戻ってきたんだ、英雄の再来だ、なのにこいつときたら・・・・・・」
レイはカイネスに敵意の表情を見せた。
「斥候だったよな、昇進のチャンスだぞ?」
その時、ネイトがレイの所へ駆けていった。
「レイさん・・・・・・」
その時ネイトは数日振りにまともに動いたのだ。
「さぁ・・・・・・、王国の勇者として、戦え・・・・・・薬なら大量にある」
カイネスは言った。
「正直、心が揺らぎそうになります・・・・・・あの薬があれば僕は苦しみから解放される」
ネイトはその後少し俯いた。
「でも、この人だけは、こんな僕を見て助けてくれようとしてくれたんだ・・・・・・」
ネイトのその時の表情は、強い決心の表情だった。
「王国の道具になんて・・・・・・ならない」
カイネスは非常に怒りの表情を見せていた。
「せっかく、多くの命を助けれるのにな!」
カイネスはネイトの腹を殴ろうとした。
その時レイはカイネスの腕を掴んだ。
「やめてください・・・・・・いや、やめろカイネス!」
レイは言い放った。
「どいつも・・・・・・こいつも・・・・・・」
カイネスは振りほどき、何かを取り出した。
それは薬だった。
「無理やりにでも、理想の勇者にしてやる」
「死んだ妻も喜ぶだろう・・・・・・、理想の勇者が守る世界をな!」
カイネスは笑い始めた。
「ぁぁ・・・・・・また・・・・・・またみんな僕の事を・・・・・・」
ネイトは薬を見た時に、戦意を喪失した。
「やめろぉ!」
レイは短剣をカイネスに突き刺した。
「麻酔入りだ」
レイは麻酔薬を短剣に塗りこんでいたのだった。
カイネスは苦しそうに唸った。
「貴様・・・・・・犯罪だぞ」
レイは冷たい表情でカイネスを見た。
「ごめんな、あんたみたいな奴とは真っ向からやれない」
ネイトは泣きながら、ローブに隠れていた。
「ネイト、逃げるぞ」
レイはネイトの手を握り、引っ張った。
「・・・・・・僕の為に、こんな事」
「すまんな、誰かさんが苦しんでるの見るの辛いんだ」
ネイトは驚いた表情だったが、次第に内から込み上げてくる想いに押しつぶされそうになった。
「すみません・・・・・・、こういうときどう言えばいいのかわからなくて・・・・・・」
「何も言わなくていい」
レイはそう呟いた。
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