第4話 仮面
「おい・・・・・・、ロードクラスの魔物だ・・・・・・」
村への街道に突如として現れた黒い影。
「ここら辺に勇者が潜伏していると聞きましたが・・・・・・是非お手合わせ願いたいものですね・・・・・・」
黒い影から出てきた魔物は触手がたくさん生えていた。
「さぁ・・・・・・、エネルギーを取らないと・・・・・・」
笑い出した魔物は近くにいる逃げ遅れた村人を掴み取り込み続ける。
「ネイト・・・・・・!?」
ネイトがいきなり震えだし、怯えていた。
いつもとは違うもっと現実的な恐怖が見えたのだ。
「あぁ・・・・・・僕を呼んでる・・・・・・、助けて欲しいって・・・・・・」
うずくまっていたネイトは起き上がり、小屋の中にある自分の剣を取る。
そしていつにない、しっかりとした足取りで外に走り出す。
「おやおや、やっと来ました・・・・・・過去最強と言われる勇者の力を見せてもらいたいものです・・・・・・でもね、私も過去最強級・・・・・・!人のパワーを吸収できるんですよ・・・・・・私はあなたのパワーを吸収して最強になる・・・・・・」
黒い人に触手が生えたようなその魔物は見るだけで恐怖の一言だった。
そして無数の残骸が転がっていた。
「だ、大丈夫です、勇者が来ましたから・・・・・・僕が居れば・・・・・・」
多くの村人が勇者の登場を希望に思っただろう。
「無理してるんだよな・・・・・・だけど、みんなに不安を与えないようにって・・・・・・」
レイは恐怖で動けなかった、ただ震えた声で願うしかなかった。
「すまない・・・・・・、だけどお前しかいないんだ・・・・・・」
「僕を・・・・・・これ以上呼ばないでください・・・・・・来てるじゃないですか・・・・・・」
ふと呟いた彼の言葉がレイには聞こえた。
村人の声援にかき消されるようだったけど確かに聞こえた。
「今何か言いましたか?」
魔物は勇者の本性を何も知らないようだった。
「すぐ終わらせましょう・・・・・・」
ネイトは剣を構え触手の魔物に突撃していった。
「あなた、判断力ないんですねぇ」
黒い触手はネイトに纏わり付く。
「捕食開始ぃ!」
黒い人型の影は大きな口となりネイトを引き寄せる。
「だめだっ!ネイト!」
レイが叫んでもネイトは何も聞こえてないようだった。
「はぁ・・・・・・」
その黒い人型の魔物が舌を伸ばした時、ネイトの動きはいきなり機敏になった。
絡まった触手を持っていた剣で切り裂き、魔物の舌を剣で刺した。
「うぐぁぁぁぁ!!」
魔物が悲鳴をあげた。
村人の人達は勝利に沸きあがった。
いつしか多くの人が勇者の戦いを見ていた。
ネイトは、そのまま怪物の喉に左手でパンチをした。
「出してくださいよ・・・・・・死んじゃうじゃないですか・・・・・・」
ネイトは今にも泣きそうな顔をしていた。
何度も何度もネイトは魔物の喉元を殴り続けた。
「助けないと・・・・・・助けないと・・・・・・」
ネイトは焦っていた。
「ぐぉぉぉぉ」
魔物は一人村人の少女を吐いた。
「・・・・・・はぁはぁ」
それを見た村人は歓声をあげた。
だが、ネイトはまだ喉を殴り続けていた。
「もう・・・・・・いっそ殺してくれ」
魔物はそう呟いた。
「・・・・・・ごめんなさい、でもあなたが食べた人を出してくれないと・・・・・・」
勇者は何度もノックを続けた。
村人も少し違和感を感じていた。
「おい・・・・・・とどめ刺してもいいんじゃないか?」
村人の一人はそう呟く。
「やめてくれ・・・・・・苦しい・・・・・・楽にしてくれ」
「もう無駄だ、エネルギーに変えられてしまっている」
魔物がそう呟いた、その時、ネイトの目が確かに震えた。
「わかりました・・・・・・楽にしますね」
「うぐぁぁぁ、これも魔物の定め・・・・・・・魔物に生まれたから・・・・・・」
剣を魔物の喉に刺すと、魔物は力を失い灰になって消えた。
「すごいぞ!少女までも救ったんだ!」
村人は歓声をあげ、勇者に駆け寄る。
「・・・・・・僕が居れば安心です・・・・・・から、少し休ませてください・・・・・・」
その場で勇者は倒れこみそうだった、だが自分で歩き続け小屋まで戻った。
「・・・・・・ネイト、やっぱりお前は勇者だよ」
レイは呟いた。
「うぐぁぁ、ごめんなさい・・・・・・守れなかった・・・・・・」
ネイトは泣き続けた。
「あの日も、あの日も、あの日も・・・・・・」
ネイトは苦しそうに数を数えていた。
「僕を呼んだ人の数と合わないんですよ・・・・・・ああ、消化されてしまったんですね」
レイはネイトに何も言えなかった。
「俺なんかが・・・・・・干渉できるような・・・・・・もんじゃない」
レイは立ち尽くしていた。
「それに、あの魔物・・・・・・止めを刺せたのに余計に殴ってしまった・・・・・・苦しかっただろうに・・・・・・魔物に生まれてさえいなければ・・・・・・」
ネイトはそのまま嗚咽し続け、朝までそれは続いた。
レイは以前のように止めることはできなかった。
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