第3話 嘘で積み上げた塔
「嘘をまた刻んでいくんだ・・・・・・」
ネイトは鏡を見ながら自分に話しかけていた。
「どうして力があるのに僕はここで立ち尽くしてるの・・・・・・!?」
鏡を殴り手から血が流れ出す・・・・・・・。
滴り落ちる血の音が響く。
「いっその事、僕は・・・・・・」
レイが急いで小屋に戻った。
するとそこには手を血だらけにして鏡の前で立ち尽くすネイトが居た。
「ネイト・・・・・・お前はもう・・・・・・戦わなくていい、俺がなんとかする」
レイは俯いてそう言った。
「あぁ・・・・・・戦わないことで幸せになれる・・・・・・そんな簡単なものなのかなぁ」
ネイトは鏡を眺めたまま話し続ける。
「僕が戦わなかったことによって死んで行く人達・・・・・・、それを背負って生きていく・・・・・・」
ネイトは血を眺めていった。
「これ以上だよ・・・・・・痛みはこんなもんじゃない・・・・・・」
ネイトは、俯いて歯を食いしばった。
口から血が流れていく。
そのままネイトは動かなかった。
「馬鹿・・・・・・誰が手当てすると思ってるんだ」
レイは、ネイトを監視して自傷行為を止めてはいた。
だが、買出しの時間だけはどうしようもない。
「これは、メイドでも雇って、俺が四六時中こいつ見張ってないと・・・・・・」
レイは呟いた。
「もういいじゃないですか・・・・・・、僕に干渉する価値なんてない、あなたが居ることで変わるわけも無い」
かといってネイトは、追い出すわけでもなくただ、いつも通りローブにうずくまる。
「お前は今何に苦しんでいる」
レイは椅子に座りながら、地べたにいるネイトに話しかける。
「自分自身・・・・・・だよ、勇者なのに・・・・・・弱い振りしてずっと逃げてる自分が・・・・・・」
レイはそれを少し冷めた目で見ていた。
「勇者はさ・・・・・・もっと強いんだ・・・・・・こんなの勇者じゃない・・・・・・、でも勇者の力が目覚めてから僕が僕じゃなくなって・・・・・・」
ネイトはいきなり立ち上がる。
「薬・・・・・・どこですか・・・・・・、こんなの僕じゃない・・・・・・誰でもない・・・・・・名前を・・・・・・名前を与えてくれる・・・・・・あの薬・・・・・・」
ふらふらとしながらレイに倒れこんでくる。
「薬は捨てた」
それを聞いてネイトは驚いた表情で手を伸ばす。
「なんで・・・・・・、苦しいのわかってるのに・・・・・・」
ネイトは弱弱しい声をあげながら涙を流し始める。
「自立しろ、あんなもの薬でもなんでもない」
しかしネイトにはそんな言葉は聞こえてないようだった。
ただ、苦しみもがくだけだった。
「・・・・・・ごめんな、だけどお前を助けるにはこれしか・・・・・・」
「誰かに管理されないと不安でたまらないよぉ・・・・・・、誰かに使われてなきゃ・・・・・・、名前を与えてもらえないと・・・・・・」
ネイトは部屋で薬を探し続け散らかした後、外に出ようとしていた。
「自分で生きるなんて無理だよ・・・・・・」
ネイトは呟きながらドアノブに持たれて、ドアを開けた。
「・・・・・・人が」
ネイトは村にいる人を見た瞬間、勢いよくドアを閉めた。
「知らない人・・・・・・怖い」
ネイトは、振り返りレイの事を見つめていた。
「酷い人ですね・・・・・・、苦しむ姿を見て楽しいですか・・・・・?」
レイは自分がしていることが正しいのかわからなくなった。
「戦いたくないのに・・・・・・お前は逃げる道もないのか?」
ネイトはただ頷いた。
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