第5話

 簡易制服の前ボタンを外しながら、カリンは洗面台の鏡を見た。

 一瞬、息が止まった。

 額に何かある。オパール色で親指大の……

「お母さん !!」

 カリンは急いで台所へ駆け込んだ。

「どうしたの? ゴキブリでも出たの?」

「違う、違うって! お母さん、あたしのおでこに変なの付いてる!」

 母親は不思議そうな顔をして、カリンの額をなでた。

「付いてないわよ、ニキビもないし」

「付いてるって!」

 カリンは自分の額に触った。しかし、石の感触はない。母親も困った顔をしている。カリンは力が抜けて黙り込んだ。

「なに寝ぼけたこと言ってんのよ」

 母親は全く相手にしてくれず、カリンは不思議に思いながら、風呂場に戻った。

 もう一度、洗面台の鏡を覗いた。

 オパール色の石がチカチカと、カリンの額で輝いている!

 しかし、今度は心臓のほうが止まりそうになった。

 鏡のなかのカリンの背後にぴったりと、あの黒づくめの男が立っていたのだ。

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