第4話
途中まで友人と帰り、カリンは早く帰ってシャワーを浴びたい、と思いながら道を急いでいた。
頭のうえには核兵器ものの太陽光線。足の下からはコンクリートから立ちのぼる殺人兵器ものの熱気。
早く帰ってアイス食べたい。冷たいジュース飲みたい。
呪文のようにつぶやく。一歩一歩足を出すための呪文だ。カリンは住宅地の長い坂道を登りながら思った。
陽炎の立つ道のはるか先に、人影が浮き出た。
近所のおばちゃんかな……カリンは額の汗を拭いながら思った。
しかし、カリンは立ちすくんだ。
あの人影は見間違いでなければ、確実にマクドで見た変人だ!
くるりと向きを変え、カリンは逃げ出した。遠回りだけど、自分の家にたどり着く小道を走り抜けて行った。
やっと自分の家の門前にたどり着き、カリンは息を切らして周囲を見回した。あの黒づくめの男はいない。カリンはホッと胸をなでおろした。
「ただいまー」
「おかえり」
台所から母親の声が返ってきた。
「暑ーい、シャワーシャワー!」
カリンはカバンを階段の下に放り投げた。
「カリン! 階段のとこにカバンなんか放り出さないで!」
まるで見ていたように台所から母親がどなった。
「すぐかたずける!」
「シャワー使ったらすぐご飯よ」
「もう食べた! あたし、いらない!」
「カリン! 何食べたの 今日は家で食べる日でしょ! 無駄遣いさせるためにお小遣いあげてるんじゃないのよ!」
「あたしはお母さんの人形じゃない! いちいち指図しないで!」
このごろ、母親は小言が多い。話してると、段々イライラしてくるし、向こうもどうやらカリンと同じようだ。
父親と顔を合わせば、進路についてまた口げんかになるし、この家は今トゲトゲだらけのサボテン無法地帯と化している。
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