第3話

「バリューセットふたつでコーラ」

 カリンはトレイを受け取り、二階席で席を確保しているはずの友人を探した。

「ねぇ、さっきはどうしたの?」

 最初に友人から切り出された。

「うーん……なんて言ったらいいかわかんないんだけど……数学のとき、外見てたら校庭に雷が落ちてね……」

「うそー、雷なんか鳴らなかったよ」

「うん、音はしなかったんだ。けど、本当に稲妻が校庭に落ちてさ……」

 カリンは友人が信じてないと思ったけれど、石のことといい気味が悪かったので、話し続けることにした。

「その跡を見たくてそこに行ったら、オパールみたいな石が落ちててね、だけど、本当に一瞬のうちに消えちゃったんだ」

「うわぁー……思いっきり夏向きの話しだねぇ。カリンが見たのって、UFOじゃないの?」

「そうかも……」

 カリンはチーズバーガーの残りの一口を口に入れた。

 ふと、階段のほうに目をやると、全身黒づくめ男が上がってきて、席にも座らず、カリンがちょうど見える場所に立った。夏なのに長袖シャツに、さまざまな色のガラス玉を連ねたチェーンベルトを腰に垂らしていて、暑苦しい真っ黒なズボンに黒の革ブーツを履いている。

 カリンは友人に、

「ねぇ、あそこに変な人がいる」

「どこ?」

「ほらそこだって」

「いないよ、どんな変な人だったの?」

 友人にはあの怪しい男が見えてないのだろうか。説明しようとして友人の顔を見てから男に目をやった。

 しかし、黒づくめの男は消えていた。

 外国人ぽい顔で、背がすごく高くて、長髪だった。けっこうハンサムだった。すごく目立つのにだれもあの男には気付かなかったようだ。

「幽霊見ちゃったみたい……」

 カリンは説明のしようもなく、ただ気味悪く思えてつぶやいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る