第21話



病室のベッドに寝転がりながら、クロエをどうやって僕のとこへ連れてきたらいいのか考えていた。




瞬間移動的な能力があったら、可能だろうか。


潜在意識と顕在意識の往き来が、もっと自在に出来たら?


召喚能力とか?




……駄目だ、サッパリわからない。




そもそも、僕の持つ大工がノリノリ能力ってものが、何なのかを理解しないと。


そこからその能力を使ってどうしたらって考える方が賢明だな。




退院して家に帰ったら、とりあえずググって糸口探しだなっ!






■■■■■





『お世話になりました。』


唇さんが病室にわざわざ顔を出してくれた。


『定期的に検査は忘れないで下さいね。』


『あと、また彼の事で何かわかればお知らせします。』


『それは是非。』



彼氏が【ダイクロイックアイ】で、担当した患者の僕もその同じ目を持つのだから、気にかけてくれているんだろう。


僕にとっては、何とも心強い。


『では、また検査の時に。』


『お大事にね。』


唇さんにお辞儀をして、病室を後にした。




会計を済ませ、その足で会社へと直行。




昼前だったこともあり、ほぼ全員が社内にいた。


『久しぶりだなオイ!』


『もう大丈夫なのか?』


『元気で何よりだな!』


『お帰りなさい。』



それぞれに声をかけられながら、社長の元へようやくたどり着いた。



『社長、さっき退院してきました。 欠勤でご迷惑をおか……』


『あぁ~! 駄目だ! ヤられた!』



……へ?


『社長、あの……』


『俺もまだまだ【読み】が甘いなあ……。』



……イヤホン?


もしや社長、今負けました?w




自分のデスクの前に、気配を感じたその人が僕にやっと気付いた。



『おぅわあ! ビックリするから声くらいかけろよっ!』


……社長、声かけました。泣


僕の背中越しから失笑が聞こえるのは無視して、もう1度伝える。


『社長、さっき退院してきました。 欠勤でご迷惑をおかけしました。 ありがとうございました。』


『退院出来たって事は、異常なしって事か?』


『はい。 ただ、頭痛の原因が未だわからないので、定期的に検査するようにと言われました。』


『そうか。 まずは一安心だな。 退院してすぐだ。 無理しないで、今週いっぱいは休め。 特に急ぎの仕事もないしな。』


『ありがとうございます。』


『ところで……、その目はどうしたんだ?』



流石社長。


誰も気付かなかったのに。w



『それが、原因はわからないんですが……。

社長【オッドアイ】はご存じですか?』


『ハスキー犬みたいに左右で色の違うってヤツだろ?』


『そうです。 その【オッドアイ】の仲間?になるみたいなんですけど、僕の場合その【オッドアイ】より更に稀な【ダイクロイックアイ】というのになったみたいで……。』


『視力とか色彩とかは大丈夫なのか?』


『それは以前と全然変わらなくて大丈夫なんですけど。 ただ見た目だけ変わった感じです。』


『それなら良かった。 』



それから僕の居ない間の仕事についてやら、復帰してからの仕事についての話しをして、会社を後にした。






■■■■■






『突然倒れた時は、どうしようかと思ったが、無事退院出来てよかったな!』


『入院中もホントにお世話になって、ありがとうございました。』




会社を後にした僕は、そのままオッチャンの店に来ていた。



お世話になったお礼をしに来たのと、久しぶりにオッチャンの料理を食べたかった。



『まだ通院にはなるみたいだが、大事にならなくてよかったよかった! ガハハハハ!』



本当に、オッチャンといい、社長といい、最高のイケメンだっ!



僕も、この2人とまではなれなくても、こんな漢(オトコ)になりたい!





オッチャンの店を後にして、自宅までの道をそんな事を思いながら、とても優しく温かい気持ちで歩いた。





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