第18話



僕は今、困っています。


非常に困っています。





原因は勿論、この目の前に居るクロエ。





さっきの唇さんとの話し……、【ダイクロイックアイ】を持つ人間が居るという現実を話してから、黙りです。



話し始めた時は、頷いたり相槌していたのに。


後半から目さえ僕と合わせず、俯いてる始末。



初めは考えるとこがあるのかとも思ったんだけど……。





あぁ~もう、どうしたんだってんだよクロエ。




『クロエ?』


僕は彼女の前にしゃがみこんで、その顔を覗き込んだ。




クロエは唇を噛み締め、まるで子犬が【おあずけ】されてるかのような顔をしている。




『どうしたの? 何か言いたい事があるなら教えて。』






『櫂ハ……ガ好キナノデスカ?』


弱々しくて、消え入りそうな声で呟くクロエ。



『んっ? 誰が何が好きだって?』




『櫂ハ、ソノ人ガ好キナノデスカ?』




……?


えっ?


僕が唇さんを?



はいぃぃい!?





どうしたらそっちへ走るのか意味がわからないんだけど。泣





明後日の方向へ激走したクロエは、言葉を続ける。



『櫂ガ、トテモ嬉シソウニ話スカラ……。 ソノ人ト一緒二居ルト、楽シソウダカラ……。 櫂ハ、ソノ人ガ好キナノデスカ?』





いや、現実に【ダイクロイックアイ】を持つ人との接点が持てたんだから、そりゃ嬉しいさっ!


てか、その【ダイクロイックアイ】の人の彼女だって言ったよね?


確かに唇さんに卑猥な感情は持ちましたよ、ハイ。


そこは認めます。


でもさ、それはクロエが僕の彼女になる前で。


今はクロエにしか卑猥な感情持ちませんが?





この子は全く……。





『クロエ?』


名前を呼ばれて一瞬クロエの身体がビクッと震える。



『クロエ。 ちゃんと僕を見て。』



未だ俯く彼女に視線を求める。


ゆっくりと、切ない目が僕へと向けられた。




『僕はクロエが好きだって伝えたよね? クロエに【恋】してるって言ったよね? 僕の気持ちがまだちゃんと伝わってない?』



『ソンナコト、ナイデス……。』


『じゃあ、何で僕が彼女を好きってなるの?』



『私ハ、……カラ。』


『何?』


『私ハ、ズット櫂ノ傍二居ナイカラ……。』






心配だったんだ。


ここ(潜在意識)でしか逢えないから、不安だったんだ。





んもぅ~!


可愛い奴っ!





疑問が解決した僕は安心して、行動する。




立ち上がり、クロエがまた身体をビクッとさせたのはお構い無しで抱き締める。




それから、彼女に唇を重ねた。




いつもなら、何度も何度も唇を重ねるだけの僕。



クロエが不安にならないように、僕の彼女への気持ちが伝わるように、今日は少し溶けさせるから覚悟して。




1度唇を数ミリだけ離して、クロエに囁く。



『クロエ。 愛してる人にしかしないキス、しようか。』



何かを言いそうになったその唇に、そっと舌を這わせる。


また身体をビクつかせるクロエ。


もう、可愛い動きでしかないから。w




それから数分、クロエが僕の腕に支えられていないと立っていられないくらいの甘いキスをかわした。













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