第17話




『凄い現実を背負って生きてる人なんだな。』


僕は唇さんの話しを聞きながら彼女に感服した。





聞いていいものか少し躊躇したが尋ねてみる。



『あの……その先生は今は……。』




唇さんは、寂しげな笑顔で現実を話し始めた。




『彼は生きていますよ。 意識障害が出てしまって、今は和な田舎の病院にいます。』


『【ダイクロイックアイ】は……今のその彼が持っているんです。』



!?



『事故でなったのは間違いありません。』



『彼が【ダイクロイックアイ】になってから、何か変わった事とかってありますか?』



彼が持つ能力はどんなものなのだろう……。



『そうですねぇ……。 特にこれといって変わった事は……。』



また振り出しか……。




『回復……少しでもよくなるといいですね。』



知識のない僕は、そんなありきたりな言葉しか出てこない。



『ありがとうございます。』




結局、収穫なしか……。




病室の扉へと向かう唇さんが『そういえば……。』


と話しながら振り向いた。




『彼のところへ行くと、不思議なんですけど、時間の流れ?がとてもゆっくりになるんです。 彼が眠っている時と起きている時で過ぎる時間が変わるというか……。 私の思い過ごしだと思うんですけどね。』



そう言いながら、唇さんは扉の向こう側へと消えていった。






■■■■■






唇さんの彼が【ダイクロイックアイ】で得た能力は、多分【時間を操る能力】なんじゃないか。



眠っている時には感じないと話していたところをみると、唇さんの思い過ごしではなくて、きっと彼の持つ能力……だと思う。




だとしたら……僕の能力は?



目覚めている時に、何らかの能力が見られてもおかしくないはずじゃないのか?




ん~……。



【エロまっしぐら】しか思いつかない僕。



てか、そんなの能力じゃなくね!?




1人ボケ突っ込みしながら、潜在意識へと移っていった。







■■■■■






『ぅわあああ!』



ビックリしたっ!


まじ心臓止まるからっ!


勘弁してよクロエ。泣






何ってさっ!


こっち(潜在意識の僕の造り出した世界)に来たら、いきなり目の前に、目の前ってホント身体がくっつく程目の前にクロエが立っていた。




『櫂ヲ驚カセヨウト思ッテ……。 ゴメンナサイ。』



ええ、驚きました!


驚きましたともっ!


クロエの思惑通りです!


でも、もう勘弁して下さい!泣





何て心の中で思いながらも、大人対応の僕。




優しくクロエを抱き締めながら、


『ビックリし過ぎるから、もうしないでよ?』



クロエの顎をクイッと持ち上げて、反省顔のその人にキスをした。




『ハイ。』



笑顔になったクロエは、僕の胸に顔を埋めた。





可愛いから僕の彼女!


もう最強!


天使だよ天使!


クロエの為に僕は生まれてきたんだよ、うん、絶対そうに違いない!





僕はクロエと出逢って、かなり痛い人になっていた。













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