第10話



『こっちは大丈夫だから、この際全身隅々まで検査してもらってこい! 検査の結果出た時は、また連絡よこせよ。』


『すいません。 ご迷惑かけますが、よろしくお願いします。』


『帰ってきたら、その分仕事で返してもらうぞ! ハハハハハ!』




僕の【こんな大人になりたいランキング1位】の社長。



相変わらずいい声だよなぁ。


声までCOOLとか……、不公平だよ神様!w


耳元で甘い言葉なんか言われた日には、その声でもう女の子ヘロヘロだよ、うん。






……喉、渇いたな。


病室の中を見回すと、隅にロッカータンス発見。


病衣になってる僕は、着ていたスーツを探してそのロッカータンスへ向かう。



カチャ……。



上着のポケットから財布を取り出して、喉の渇きを潤す為に、病室を出て自販機探しに向かった。







■■■■■






『櫂……。』



クロエは、彼の名前を口にして考えていた。



自分の持つ彼へのこの感情は何なのか……。



今までにも、何度か人間には会っていた。


【オッドアイ】を見た事もある。


その能力も。




『櫂ガ持ツ能力ハ何デショウカ……。』


少しわくわくしていた。



見た事のない【ダイクロイックアイ】。



未知数の彼の能力。




ただ……。


クロエはまだ自分の感情に疑問を持っていた。



彼に触れた時の安らぎは何だったのか……。


自ら交接したいと口にした自分に驚いた。


彼が触れてくれず、自ら求めて彼の唇に触れた自分。




ン~……。


ワカラナイデス。





そんな自分の感情に気付くのも、すぐなのだが……。







■■■■■





ガタンッ。


自販機からコーヒーが落ちる音が廊下に響く。



カシュッ。


ゴクゴク……。



ップア~、生きてるわ僕。w



なんて思いながら一気に飲み干した。





病室へ帰る途中、詰所の前で唇さんにバッタリ遭遇。



『アラッ、歩いて平気ですか?』


『ハイ、大丈夫です。』


『無理せずに、何かあったらナースコールして下さいね。』


『ありがとうございます。』




……笑顔もこれまた可愛いなぁ。


白衣の天使って言葉は、彼女の為にあるわ。


ウン、絶対。


唇プルっプルの上に、白衣が苦しいって胸とお尻が悲鳴上げてます!



窮屈なその白衣、僕の病室で脱いでいいですよ!


いや、脱ぎましょう是非っ!




……唇さん、貴女は罪な人です。






廊下にあった鏡にふと目が向く。



ん~、現実ね。



左右非対称、左目2色。



『大工がロックねぇ~……。 ノリノリな人生ならいいなぁ。』


そんな呑気な僕は、来た道を病室へと歩いていた。












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